#29 FC KOREA 李清敬 総監督 インタビュー Vol.2
-特に東京はインターナショナルな都市であって、世界中の人達が住んでいます。サッカーの世界でも日系ブラジル人のチームや在日コリアン系のチームがあっても良いと思います。
李 僕らはその先駆けだと思っていますから。47都道府県それぞれの色はあるんですけど、例えば「ブラジルは静岡、スペインは埼玉」だと。その地域のサッカー指導者なり自治体がガッチリと手を組んでね。そうやっていると「日本からも良い選手どんどん出てくるんじゃないか」と。まぁ、それはあまりにも極端ですけどね(笑) 在日コリアンのFC KOREAが「日本サッカーに一石を投じる」という部分では、良い意味で恩返しにもなるし、日本サッカーが文化として認められる、色々な意味でのキッカケになればなと思いますね。
「民族の誇り」を背負い戦うサッカークラブが、日本にもっと存在しても良いのではないか?
-スペインのバスク地方には(バスク人のみの)アスレチック・ビルバオというクラブがありますね。日本にも実際に「民族の誇りを謳うクラブ」があるけれど、人々が気付いていないだけかと思います。
李 何かの本に「日本のサッカーがコリアンに乗っ取られる」なんて書かれているのを見た時には、ビックリしましたね(笑) サッカーには言葉はいらないんですよ。例えば私がアルゼンチンに行くとするじゃないですか。アルゼンチン人に「そんなに太っててサッカー出来るのかよ?」と言われて、私がリフティングをポンポンとやったら、向こうの人は「おー!」となって、それでもうアミーゴじゃないですか。言葉はいらないわけですよね。サッカーは色々な事が出来るので、そういう事は日本でも出来ると思っています。凄くやり甲斐がありますよね。
-現在は在日5世の方までいるそうですが、李さんの世代と若い世代で気質の部分は違ってきますか?
李 1世と2世を比べても違いますからね。ですから1世と5世だと全然違うと思います。1世から見たら3、4、5世は日本人に見えるんじゃないですか。朝鮮の事を知らないですし。ただ、民族学校がギャップを補ってくれている部分があります。朝鮮の言葉を勉強しますし、朝鮮の風習や歴史も学ぶ事が出来る。それでも1世から見たら3世とかは貧弱に見えるでしょう(笑) サッカーの試合でも昔は勝っていたけど、今は勝てなかったり。だからそこは「もっと頑張れ」と言いたいですし、気持ちの部分ではもう少し強くなってもらいたいですね。
-KOREAの選手達を見ていると、局面の勝負が強く、試合に懸ける思いがとても強いように映ります。そういう力強さは民族性によるものなのでしょうか?
李 日本の方も一緒だと思うんですが、例えば日本の方が外国に行くじゃないですか。そこでは“その人個人”としては見られないんですよ。外国に行ったら個人ではなく“日本人の代表”のように見られる。何をやるにしてもナメられてはいけないし、失敗しても自分だけの事じゃなくなるんです。
それと同じように、私達も日本ではコリアンとして見られるので、そういうものを背負っているんですよね。「頑張らないといけない」と。ましてや私達は日本で生まれ育って、小さい時から色々と見てきているわけなので。日本の方と同じ権利があるわけなんですけど、それが成されていない部分もあります。政治の事はあまり分からないですけどね。だからアピールしないといけないし、頑張らないといけないという気持ちがある。その中でも、サッカーはコリアンの中で凄く特別なスポーツなので、より頑張らないといけない。在日コリアンの人達にこのチームの意義というか、「頑張る事で勇気と感動を与えよう」と。そういう目的を持ちながらやっています。そういうものを背負って頑張るというのは、日本の方達が海外に出て感じる事と共通すると思います。