#26 エリースFC東京 小宮敏裕 理事長 インタビュー Vol.1
-他にはどんな例がありますか?
FC町田ゼルビアから来た谷川(烈)もプロから一転して、法政大学に入学して会社務めをしています。同様に今年入会した前・ゼルビアの津田(和樹)も、東京学芸大学にいてMBAを取得していますしね。二人ともTOEICも高得点です。やはり賢くないと戦況を読めないし、頭の良い選手は自分の事をわかっている。単に、英語が喋れるとか数学が出来るとかじゃなくて、人間力というのかな。さっき言った経営者になった長谷川選手も、駒澤大学を出てウチに来た時はチャラチャラしていましたが、今では会社を経営するまでに成長して立派になりましたね。12年くらい前は全然ダメだったですよね(笑) そういう成長していく姿を見守るのも楽しいですよ。学校の先生だと4年とかで終わってしまうけど、僕は10年、20年と見続けられるのでね。
-エリースというクラブの環境が、人を成長させていくんでしょうね。
小宮 そう言ってもらえると嬉しいですね。ただ、何で茶髪がいけないかと言ったら、感性の問題なのだけど僕が嫌いだから(笑) 規制で禁止されているわけじゃないですけど、ウチでは「小宮さんが言っているから」と、暗黙のルールのようになっています。僕がいなくなったらまた変わるかもしれませんね(笑)
-「仕事もサッカーも100%でやる」というのがクラブのモットーだと思いますが、中には仕事が大変でエリースを辞めてしまいそうな人もいると思います。そういう時はどのようなケアをしていますか?
小宮 全然参加出来ない人は、呼んで食事しますね。お酒を飲んで話し合います。なかなか試合に出られなくて塞ぎ込んでしまう人もいますし、必ずそういう人は出てくる。仕事で来られないのは仕方ないですよね。サッカーでお金を貰っているわけではないから。後は奥さんが妊娠していて、気遣って来られないとか。
結局、仕事・家庭・サッカーが3つ並んでいるけど、仕事と家庭が最優先で、サッカーは趣味の世界ですから。優先度では3番手になりますよね。サッカーを1番手にしようとするなら、プロになってサッカーを仕事にしないといけない。仕事って思うようにならないし、嫌な上司もいるでしょうしね。大好きだった彼女と結婚したけど、10年間ずっとラブラブかというと、ね。
サッカーもそう。いつもゴールを決められるわけじゃない。どれをとっても上手くいく時といかない時がある。そこのバランスですよね。3つをうまく両立させていくのは大変なのですけど、そのバランス感覚が大事です。仕事もサッカーも100%というのは「やる時はやる」という気持ちを100%出すという事。人間が24時間365日の中で、何にどれだけ負荷をかけるか。ある時は仕事に没頭する、ある時は家庭を大事にする。ある時は、ひょっとしたら仕事を休んでサッカーを頑張らないといけないとか。その頑張り所ですよね。サッカーで仕事を休むなら、上司とうまく話して、理解してもらわないといけない。そういうコミュニケーションをしっかりしないと、簡単には休めないですから。そんな立ち回りが社会人として、ビジネスマンとしての成長に繋がっていくんです。
(Vol.2に続く)
<プロフィール概略>
小宮敏裕…1952年5月8日生まれ。立教大学卒業後、1975年エリースフットボールクラブに加入。選手・スタッフとして活動後監督を歴任し2006年NPO法人を立ち上げて理事長となる。
現在はNPO法人エリースフットボールクラブ理事長、公益財団法人東京都サッカー協会評議員・財務委員、東京都社会人サッカー連盟運営委員を兼務。