#20 FC町田ゼルビア 楠瀬直木 強化・育成統括本部長 インタビュー Vol.2
-なるほど。まずはJリーグ加盟クラブと非J加盟クラブの金銭面で不公平な状況にあると。
楠瀬 だけどJ3になったからといって、誰でも登録出来るとなったら心配ですよ。さっきも言いましたが、高卒の子にどういう判断をしてあげられるのか。大人としてどういう事を言ってあげられるかといったら、「しっかり大学行きなさい」と。「J1やJ2に入れないんだったら大学に行きなさい」ですよ。それがJ3リーグの誕生によって、今までJリーガーの肩書きを得られなかったレベルの選手が、Jクラブに入れちゃうんですよね。それでアルバイトするわけです、Jリーガーが。夜に居酒屋で働いたりするわけですよ。“勤労青年”で美しいかもしれないけど、そんな事でその子の人生が良くなるのか分からないし、そこは難しい線引きですよね。
「3部クラブは、ちゃんと身の丈に合った成長をさせられるのなら、J3参入も問題無いとは思うが…」
-Jクラブというネームバリューにつられ、いざ入ってみたら全然環境が整っていないなんて事も。
楠瀬 そうなんですよ。僕も本田技研に在籍していたから分かりますが、そんな状況ならば、Honda FCやホンダロックサッカー部や佐川印刷SCといったJFLクラブのほうが環境が良いですよ。大手企業がついていますから、入社出来たら安泰なんです。そこで好きなサッカーも出来て、将来は仕事も出来ます。それが『J3が出来るから』と安易にJ3クラブに行ってね、中には“Jリーグ”ブランドを勘違いしてしまって、茶髪になり、無理して高級車に乗って…なんて、そういう選手はどうかと思いますね。だから、そこが本当に難しい判断だと思います。
-確かに、その判断は誰がするのか、といった所が難しいですね。
楠瀬 そこはまわりの大人が判断する部分でしょう。あとは、J3に昇格できたら、小さな街にとっては町興しになるかもしれませんし一概に駄目とも言えません。各クラブが、ちゃんと身の丈にあった成長をさせられれば、問題無いと思うんです。ウチの場合は、J2でもJ3でも『ゼルビアの試合』を見に来てくれると思っています。
本当に有り難いことですが、ムーブメントではなくサポーターの皆さんが付いてきてくれている。でもクラブは、それに胡坐を掻いてはいけない。クラブとして、お客さんやスポンサー企業の皆さんにも良い思いをさせてあげたいから、J2、J1と上がっていきたいんです。もっと良いチームにして、もっと良いスタジアムが出来て、もっとサッカーの環境が良くなる。そして応援してくれる全ての人の幸福度が上がる。そうしていくのが僕らの仕事だと思っています。
-サポーターはJFLに降格しても応援し続けています。それは街にサッカーが根付いているからでしょうか?
楠瀬 それはもう、歴史的に見てそうでしょうね。実は、僕が町田に縁があるのは20年くらい前からなんです。町田選抜vs帝京OBで招待してもらって、試合をしているんです。その時に守屋さんと会っているんですけど、そこからのスタートなんですよね。「Jクラブを作ろう!」なんて話は世の中に沢山あるんだけど、町田はそれを実現していったから、「凄いなぁ」と思いました。下川社長にも10年以上前に会った時に「クラブを作りたいんだ」という話をされていました。その時は「みんな、よく口では言うんだよなぁ」なんて思っていたら、本当に作っちゃったんですから。最初にそういう縁があって僕はココに来たので、クラブを愛するというベースはあるんですよ。それを感じたからこそ、「ここならば!」と思って来たんです。