TOP>>インタビュー>>zelvia-interview>> #20 FC町田ゼルビア 楠瀬直木 強化・育成統括本部長 インタビュー Vol.2

#20 FC町田ゼルビア 楠瀬直木 強化・育成統括本部長 インタビュー Vol.2

-「このクラブは街の人達のもの」とおっしゃっていました。

楠瀬 ざっくりとした表現ですが、エリートだけを集めるのではなく、サッカーが好きな、大勢の子供達が、ココでサッカーが出来ているおかげで、学校生活もちゃんと送れているとか、青春をエンジョイ出来るとか、色々な事に気を遣える人間になるとか、が大事だと思うんですよ。そういう中でも、きちんと真面目に取り組んでいれば、プロになる子はプロになります。もちろん、日本代表に関わるかとか、30歳まで第一線でプレー出来るかとか、そういうレベルに行ける選手は一握りになっていきますけどね。

「まずは『町田でゼルビアでサッカーを続けたい』と思えるような環境整備が出来るかどうか」

-一口に環境と言っても、街・クラブによって千差万別ですよね。

楠瀬 育成する環境を整備するって簡単な事ではないですよ。畑はちゃんと耕さないと、いくら良い品質の種を植えても、美味しい野菜は育ちませんよね。あとは、最近は“育成システム”に沿って育ってきた『同じような選手』が多いかなと思います。でもね、やっぱり『個性をもった選手』が人(観客)を呼ぶんですよ。スターと呼ばれる選手には個性がありますよね。本田圭佑にしたって中村俊輔にしたって、Jクラブのユースには上がれなかったわけですよ。もちろんユースに上がっていった日本代表選手もいますけど、『育成段階の結果で答えを出すべき無い』とは思いますね。

-だから他クラブと「上か、下か」を比較するような事ではない、と。

楠瀬 そうですね。他クラブとして比較して、あーだこーだという事もありますが、そこで全てが測れるものではありません。その先、最終的に個性のある『本当の良い男達』を輩出できるか。それがトップの選手であろうが育成スタッフであろうが、広報のスタッフであろうが一緒なんです。ゼルビアの場合、ここまでクラブを作り上げた重田さん、守屋さん、下川社長など深く関わってこられた方の芯となる想いを受け継いで、我々もビジョンを練り、作り上げていかないといけませんから。

-ゼルビアらしい育成があるんだ、と?

楠瀬 そういう事です。ヴェルディ時代で辛い思いをしたのは、結局スポンサー任せで経営体制が代わるという部分。どうしても『Jリーグの陰』の部分でしょ。それを否定するわけでは無いですが、そういう事があるのも事実。だから、せめてココでは、グラウンドに近ければ近いほど、理想なんだけどピュアでいたいんですよ。その代わり、「ピュアだから、サッカーをやって家を建てられるかどうか分からないよ」「子どもを良い大学に入れられるか分からないよ」というのも事実。ただし、東京の中での“幸せ度”という部分は上げていきたいんですよね。

-それも含めてクラブの環境整備を進めていこうというわけですね。

楠瀬 コーチ達と食事に行ったりするんですが、決して高級店に行けるわけじゃないし行きませんけど(笑)そこには男性陣だけじゃなくて、奥さんも来たり友達が来たりね、町田に来たらそういう雰囲気があったんです。食堂の人が500円で食べ放題にしてくれたり、半額にしてくれたり、凄く協力してくれるんですよ。そういう部分も考えると、ゼルビアが目指す『あるべき姿の育成』と、ヴェルディのあるべき姿の育成とは違うなと思いましたね。

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