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#19 FC町田ゼルビア 楠瀬直木 強化・育成統括本部長 インタビュー Vol.1

-今の立場になられて、最初の仕事は何だったのでしょうか?

楠瀬 選手の整理や補強ですね。整理というのは、選手も不安だったので気持ちの部分も含めてフォローしました。補強でいえば、秋田監督とも「どういう選手が良いか」とか、ハード面も含めて話し合いました。(11月末~12月上旬と)急だったから、あの1ヶ月は大変でしたね。何となくは知っていましたけど、トップチームの現場で、そうやって“強化部長”という肩書きで動いていた事はなかったので。各クラブの強化部長に「安くレンタルで選手を貸してください」とお願いをしたり。それで実際、色んなチームの方に協力して頂きました。若くて今年出番がないから、という事で結構来てもらえました。本当に助かっています。

「5年は苦労するけど、苦労の時こそ笑ってワイワイ出来ないと。沈んでたら縁も運も飛んでいっちゃう」

-秋田監督からも具体的なリクエストはありましたか?

楠本 もちろん。固有名詞も出ましたし、交渉もしました。深津康太なんかはそうですよね。ヴェルディも絶対に離さないという事だったけど、色々と交渉を重ねて来てもらえる事になった。もちろん監督の優先順位で『ここが必要』というのに対して、サポートしないといけない。選手がいないのに『これで勝て』なんて事は言えないです。人数も多くて、最初はこんな人数を予想していなかった部分はあります。24~5人から始まって最終的に今30人の選手がいます。

-高野光司選手や田中貴大選手などは、楠瀬さんの事を信頼し、移籍してきた部分もあるかと思いますが。

楠瀬 こっちからも「来て欲しい」という事は言っていました。周りの人から見たら、「どんどん緑色になっていくじゃないか」となるかもしれない。柏レイソルだったり他クラブからも来てくれていますが、僕が“緑”だったので、特にそう見られがちな部分もある。でも、やっぱり1年1年、一戦一戦が勝負だし、育てている暇があまり無かったりもします。『性格的にどうだ』とか、『辛い時にコイツはどうするか』とか、そういうのってやっぱり教え子の方が分かるじゃないですか。

-そういった部分は、練習や試合のパフォーマンスだけでは分からないですね。

楠瀬 だから2~3試合見て獲ったとしても、『性格的にどうなのか、好き嫌いはあるのか、一人で寝られるのか、ホテルではどうなのか、私生活はどうなんだとか』、色々な問題が出てくる時がある。そう考えると知っている子になっちゃいますよね。でも決して(彼らの)質が低いわけじゃない。後は、お互い様なのかもしれないけど、『安くても来てくれる』とか、『勝利給が無くても来てくれる』とか、『環境はこうだよ』とかね。教え子だから言う事を聞かせちゃったのか、それとも信頼してくれているのか(笑)

-選手の質と量は、JFLでトップクラスだと思いますが。

楠瀬 大変なのは来年ですよね。ウチの強化費で、(本来は)この人数、この質は無理なんですよ。各クラブがかなり協力してくれているから、まともにJ2クラブの基準に合わせて契約したら、全然お金が足りないんですよ。昇格出来たとして、J2並の契約にすると(選手数は)半分くらいしか雇えないんじゃないかな。だから、今も営業スタッフが必死になってやってくれていますよ。例えば、「選手の家賃を半額にしてくれ」とか。何かで補っていかないといけないですから。

-ピッチの外でもかなり努力が必要な状況ですね。

楠瀬 選手も大変ですよね。試合後は、出場していた選手も『ふれあいサッカー』に出てくれる。その後もフットサル場でフットサルの個人大会があるんですけど、そこにも選手を参加させたり、営業でスポーツショップに行ったりと、毎週のようにそういうのがあります。でも選手も嫌な顔をせず協力してくれるから偉いなと思いますよ。こうやってクラブを作っていく中で、何年かかるか分からないけれど、変わる時ってやっぱりみんな大変じゃないですか。お金を出す方も大した利益はないし、やっている方も頑張っているけど他のクラブに比べたら給料も安いし、環境も良くないし。この5年くらいは結構みんなが苦労すると思うんです。ただ苦労している時こそ、みんなで笑ってワイワイ出来ないとね。沈んでいたら“縁”も“運”も飛んでいっちゃうからね。

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