#15 横河武蔵野FC 依田博樹 強化担当 インタビュー Vol.1
-監督3年目の2009年に、チームはJFLでリーグ2位という結果を出しました。その前年から攻撃的なサッカーにシフトしていたようですが、そこに至るまでに何があったのでしょうか。
依田 監督就任当初は結果を求めるが故に、負けたくないという気持ちが非常に強かった。まずは失点をしないという戦い方で、2年目の途中まで同じやり方でした。ですが、ムサリク( 武蔵野市立陸上競技場)でやったニューウェーブ北九州(現・ギラヴァンツ北九州)戦だったかなぁ、そこで1点差で負けたんですよね。そういう結果になって、自分の中に『仮に守って勝ったとしても、面白くない』という感情が生まれてきましたんです。そこから『勝つだけじゃダメだな』という想いが自分の中で沸々と湧いてきたんです。2年目の終盤からは『自分のやりたい事をやって勝ちたいな』と。自分の考えを選手達にも話して、3年目はスタートから攻撃的にやりました。そこが大きな変化だったのと、サッカー自体も上手くハマッたのが2009年だったのかなと思います。
-それまでは泥臭く戦ってきたとの事ですが、チーム作りの上で仕方が無い部分もあって、なかなか戦術変更に踏み切れなかったのでしょうか?
依田 そこ(泥臭さ)は無くしちゃいけないなと思っています。チームの伝統というか、良い所は持ち続けながら、上積みしないといけない。それが監督の使命だと思うんですよね。良い所を消すのではなく「伸ばす、新たに加えていく」という形を考えたんです。
「伝統は失わず、上積みするのが監督の使命」
-それが実を結んだのが2009年だったと。
依田 あの時は今と比べれば選手層も厚かったですし、選手達にもあのサッカーがフィットしたんでしょう。
-ところが2010年以降なかなか結果が出ず、2009年の躍進があったので悔しさも大きかったのでは?
依田 選手も入れ替わって、同時にJFLや日本サッカー界の流れも変わってきた。色々なチームが出てきて、我々も新しい選手を上手く補強するリクルートが満足に出来なかった。ただ一番は、私の目指すサッカーを選手達に浸透させられなかった事。もしくはその内容がマッチしていなかった。それを2010年は特に感じました。そこでもう一度泥臭いサッカーに戻していれば、また違った結果になっていたかもしれないですね。
「JFL、大学、高校と日本サッカー全体のレベルが上がり、サッカー界の流れも変わってきている」
-サッカー界全体が変わってきたとおっしゃいましたが、JFLのレベルは年々上がっていると感じますか?
依田 勝てていないという事で、そう言わざるを得ないでしょうね。自分達の立ち位置も変わってきています。我々も含めて、社会人が高校生(Jユースチーム)に負ける時代ですから。それはサッカー界全体で見れば喜ばしい限りですけどね。横河にも育成チームがありますけど、育成年代で教えている指導者の皆さんの頑張りが、日本サッカー界の底力として支えているんだろうなと。監督をやった6年間で、高校生、大学生と戦ってきましたけど、そこは本当に実感しました。私が選手をやっていた頃とは全く違いますね。
-単に技術が上がっただけでなく、総合的に力をつけていると?
依田 そうですね。結果的にユース年代の選手達が大学に行き、大学を経由して色々なチーム(JリーグやJFL)に行きます。上を目指していこうというチームに、その選手達が入っていけば、やはり全体のレベルは上がっていくと思いますね。