#34 早稲田ユナイテッド 今矢直城 監督 インタビュー Vol.2
-現役時代のそういった経験が、今になって活かされている面はありますか?
今矢 やはり、サッカーは全てですよね。本当に幸せでした。嫌な事はたくさんありましたけど、新聞を読んでもサッカーですし、テレビを見てもサッカー、街を歩いていても皆がサッカーの事を話しています。スイスの時は1部だったので、良いプレーをした次の日に街を歩くと「イマヤ、イマヤ」と皆が呼んでくれたり。
「欧州は全ての環境において圧倒されましたね。無名の日本人がプレーできた事は奇跡に近いですよ」
普通では感じられない環境、グラウンドにしてもスタジアムにしても、練習の環境にしても、全てにおいて凄いなと圧倒される部分が沢山ありました。その場に立てるのならチャレンジした方が良いと思います。ただ、それもごく一部の人間ですし、僕もスイスのチームにテストで入っているんですけど、あそこで受かるなんて本当に奇跡だと思うんです。2003年はヨーロッパでやっている日本人はまだ少なかったですし、しかも自分は代表にも入っていなかった。そんな選手がスイスのチームに行ってテストを受けても、99.9%受からないと思うんですよ。たまたま0.1%の確率で獲ってもらった。その経験は無駄にしたくないですし、あのタイミングで無名の日本人を獲ってくれるというのは、今振り返っても本当に奇跡としか言いようがないですね。でもそれは結局、行ったからそのチャンスが芽生えたわけなので、凄く夢がありますよね。全てにおいて、身だしなみ一つにしても勉強になりますし、きちんとしていないと文句も言われますし、学ぶ事ばかりでしたね。
-現在では、高校や大学を卒業してそのままヨーロッパや東南アジアに渡る選手もいます。それでもまだ、Jに行けなかったらサッカーを辞めてしまう人も多いと思いますが、その辺り視野がまだ狭いと思いますか?
今矢 数年前はそう思っていましたけど、今では凄く変わってきていますし、海外での日本人の価値というのはとても高いです。チャンスがたくさん広がっているので、羨ましくもありますよね。どこかに行けば拾ってくれる可能性もあるでしょう。10年前はかなり下に見られていましたからね(笑)
-今矢さんも海外への道を切り開いたパイオニアの一人だと思います。
今矢 そこまでの結果は残せなかったですよ。中田英寿さんだったり、今で言えば例えば香川真司選手がそういう道を切り開いてくれたおかげだと思います。でも無名の選手に関しては、もしかしたら僕がパイオニアかもしれないですね(笑)
-03-04シーズンに、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)に出場した日本人選手のうち、今矢さんだけが日本代表の経験が無かった。それは語り草というか凄い事だなと。
今矢 本当に奇跡だと思います。今振り返ってみても、誰かが僕の立場で今から行きますと言ってきても、多分僕は「バカじゃないの?」と言うと思います。そんなの可能性ゼロだよと(笑) 当時もチュニジア人選手の加入が決まらなくて、たまたま僕がそこにいて、じゃあこの日本人を獲ろうという感じで、タイミングも全て完璧だったんですよね。運も実力のうちかもしれないですけど。