#31 FC KOREA 李清敬 総監督 インタビュー Vol.3
-JFLに昇格する事は在日コリアンのサッカーチームを強くする為だけでなく、文化的な意味も大きいですね。
李 本国は二つに分かれているじゃないですか。まだ早いですが今後、統一チームを作る意味で見本になるんじゃないかと。ウチの選手だって20人くらいいて、韓国籍が12~3人、朝鮮が6~7人。日本籍もいます。今は国籍じゃないんですよ。日本の学校に行った子もいるけど、ここで一つになれるという事は良い見本なわけですよね。本国が出来ていない事を我々がやる事で、今後の統一コリアのサッカーチームの見本になれる。1991年にポルトガルでユース世界選手権があって、その時に南北統一チームが一度だけ出たんですよね。その時にアルゼンチンに勝った(※1-0で勝利)のかな。そういう部分で僕らは普段から地でいくことで北と南のヒントになればなと。見本と言うと失礼だから、「こんな事も出来るんですよ」と。日本のサッカー人達との交流と流れで本国にも相乗効果が生まれればなと。
-今まで非常識だと思われていたことが常識になって、サッカーを通して人々の認識が変わっていくだろうなと。FC KOREAというクラブがあるからこそ具現化できる。実例として示せるのではないかと思います。
李 夢物語というか選手達も半信半疑でやっていた部分もあると思いますけど、続けていく事は力がつくという事です。本人達もわからない間に力がついてきている。これが昨年の全社で一気に爆発したという意味で、面白い傾向だったかなと。当時キャプテンが関西人だったんですけど、ノリと勢いで頑張ろうと関西弁で言っていました。そういう若者らしい、あまりプレッシャーというものがないのかなと。それが面白かったですね。高校サッカーを指導していて、子ども達がプレッシャー受けるのを見ているので、FC KOREAの選手達はなんでプレッシャーがないんだろうなと。リラックスしていましたね。関西や色々な地域の選手が集まって相乗効果が生まれたかなと思います。
-FC KOREAを作ってから今まで、苦労もあったかと思います。そんな時、何が支えになりましたか?
李 やはり私は、根っからサッカーが好きなんですよね。サッカーで色々な経験をしてきましたし、思い出もたくさんあります。でも今の子ども達ってそういうのもわからないので、まだ見ていない世界を見せてあげたい。在日コリアンの子ども達にまた新しい世界を見せられる。もう一つ、日本のサッカーと同じ土俵でプレーする事は、FC KOREAにしか出来ません。日本のリーグに入ってプレー出来る。そういう素晴らしい世界を、私自身も見ていきたい。そういう思いがずっとあったからこそ、ここまでやってこられたのかなと思います。
(了)
<プロフィール概略>
李清敬・・・1958年11月11日生まれ。在日コリアン2世。朝鮮大学在学中に北朝鮮代表に選出。1980年、アジアカップでも代表選手として名を連ねた。大学卒業後、在日朝鮮蹴球団で約10年プレーし、現役引退後は指導者の道へ。1994年から東京朝鮮高校の監督を4年間、1998年に蹴球団に戻り、「幻の日本一」と呼ばれたチームの監督を2年間務めた。その後、2002年のFC KOREAの創設・強化に尽力し、2012年からは総監督となりクラブの理事長も務める。2002年、在日コリアン初となるJFA公認S級コーチングラインセンス取得。