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第22回 なぜFC東京なのか(後編)

しばらくはFC東京と東京Vのホームゲームを両方見るサッカーライフが続いた。とはいえ、山中さんの軸足はあくまでヨミウリの伝統を継ぐ東京Vである。ところが、2003年シーズン、転機が訪れる。

「2003年は両方とも好調で優勝争いをしていました。シ-ズン終盤、先にヴェルディが一歩後退して、東京はまだ可能性が残っていた。そこで、初めて東京のアウェイ遠征に行ったんです。ガンバ大阪戦、万博競技場。結局、その勝負どころの試合で負けてしまい、それでも数字上の可能性は残っていたんですが、次の試合で完全に消えました。東京ダービーで、飯尾(一慶)に同点ゴールを決められたんです。アマラオが東京を去ったのもあのシーズンでした。最後の柏レイソル戦、日立台に行きましたよ。まさか自分が2試合連続でアウェイに行くとは思わなかった。アマラオの2ゴールで、4-2の逆転勝利。盛り上がりすぎて、ピッチになだれ込んじゃってね。えらく怒られました」

山中さんは身体がうずくような余韻を抱えたまま、その年のオフに入った。FC東京と東京V。そろそろどちらかに決めなければいけないと思った。悩んだ。自分はもともとヨミウリのファンではないかと。答えはすでに出ているような気もしたが、じっくり考えた末に選んだのは、青赤のチームだった。

「勢い。そうとしか言いようがないです。何が魅力とかいちいち考えない。僕みたいなのは多かったと思いますよ。勢いでファンになった奴が。知り合いには元ヨミウリのファンが大勢います。ヴェルディをこき下ろすのも、だんだん周りに洗脳されちゃいましたね。でも、あれはチーム力が拮抗しているからこそ面白かった。失礼な言い方をすると、いまは心の底からこき下ろす気になりません。それでも早くJ1に上がってきてほしい。いまの東京ファンはダービーではまたやってやろうという気でいると思いますが、このまましばらく経つとそういう空気もなくなってしまうかもしれませんよ」

FC東京と清水のゲームは、前半を終えてスコアレス。後半、河野広貴の出番はやってくるのだろうか。山中さんは河野の17番のレプリカシャツを着ていた。

「僕は好きなんですよ、ああいうタイプの選手が。相模原(東京V育成組織の支部)でプレーしていた中学時代から知っています。勝ち気で、ドリブルでガンガン仕掛ける。いまのヴェルディでいえば、杉本(竜士)や中島(翔哉)もそうですね。東京の育成もああいった選手を育てなければいけないと主張しているんですが、ちょっと難しいだろうと感じます」

いまの東京Vに対して、山中さんはどう感じているのだろうか。

「小林祐希(現ジュビロ磐田)、高木善朗(現ユトレヒト)など、いまのチームの中心にいるべき選手がそうなっていない。問題はそこなのでは? 彼らこそが誇れる財産でしょ? 仮に今年J1昇格を決めたとしても、1年で落ちてしまうと思います。高原(直泰)、西(紀寛)などのベテランの力を借り、上がるんだという意欲は感じますが、実力のあるユース上がりの選手をどう組み込んでいくか、長期的に計画しておく必要はある。あとね、ヴェルディは過去にいろいろあったじゃないですか。古くはナベツネの発言、ホームタウンの移転、消滅危機など。ヴェルディを応援しようとすると、そういったものが頭をよぎってしまう。新しいファンがそれらを背負うことはないんですけどね。それならいっそ、町田や東京23(関東サッカーリーグ1部)など新しいクラブを応援しようか。そう考えて不思議はないです。なぜならそっちのほうが気が楽だから」

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