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#7 ベレーザの強さの根源

それでも、ベレーザでの最初の時期は苦労する。育成年代屈指の強豪であるメニーナで主力としてプレーし、世代別代表の常連でもある土光にしても、トップチームに上がれば1人の新人に過ぎない。そこから成長していくには、本人の最大限の努力が重要なのは言うまでもない。それに加えて周囲の要求レベルの高さが、更に選手を進化させていくのだ。土光の隣にはセンターバックでコンビを組む岩清水梓が、前にはボランチの阪口夢穂がいる。周りを見ても、代表クラスが居並ぶ。メニーナとのギャップを埋めていく上で、ベレーザはこれ以上ない環境だろう。

愛のあるスパルタは、土光だけに向けられたものではない。メニーナからベレーザに上がってきた全ての選手が経験する道だ。偉大な先輩達から脈々と受け継がれてきた伝統。最初は力の差に戸惑う。そこからベレーザのレベルに適応しようと研鑽の日々を過ごす。ピッチに立っているのは競争を勝ち抜いた猛者ばかりだ。だからこそ強豪の地位を確立しており、例え主力がごっそり抜けても戦える。

INAC戦は、今シーズンで一番良かった

シーズン前半戦、ベレーザは中断が近づくごとに上位チームとの対戦が増えていく日程だった。そして、中断前最後の相手は首位・INAC神戸レオネッサ。結果的に敗れはしたが、土光は90分を戦い抜き、本人も納得のいくプレーを披露した。

「思い切って、“やるしかない”という気持ちでやりました。気をつけたのは立ち上がりの入り方。最初のプレーが良かったので、しっかり試合に入れた。INACとの試合は、自分としては今シーズンで一番良かったと思います」

その言葉通り、リーグ最多得点の首位チームに対して冷静な守りを見せた。最前線の外国籍選手にも身長の差を感じさせず、球際の争いにも躊躇することなく挑む。スピードを活かしたカバーリングで、ピンチの芽を摘み取った。

ただ、首位決戦が近づくにつれ、それまでに得た自信のすぐそばには弱気な自分もいた。実はINAC戦の前、野田監督は選手全員が揃ったミーティングで、「真代の所をむこうは絶対狙ってくる」と話した。そして、土光も不安を漏らしたという。だが、ピッチに立つには責任が伴う。甘やかしたりはしない。

「チームとして事実を共有するのが目的だったんですけど、真代にはそこで宥めたりせずに、はっきり『狙われるよ』と話した。でも、そういう事を乗り越えて逞しくなっていくものだから」

このミーティングも、“やるしかない”と土光を奮い立たせるキッカケの一つになったのではないだろうか。国立競技場のピッチに、シーズン序盤のビビった背番号23はいなかった。

最後に、これからの課題に話を向けてみた。少しはにかむように笑う。 「ビルドアップ、苦手なんですよ。でも、ビビらず出せるようになりたい。近くの人だけでなく、ひとつ飛ばしたパスも出していきたい」

その微笑みに、16歳の少女らしさがのぞいた。ただ、試合の話になると、表情はすぐに引き締まった。 「勝ちにこだわりたいです」 1人の新人選手が、百戦錬磨の先輩達の中で、階段を駆け上がっていく。

(了)

(取材・文 青木務)

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