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#7 ベレーザの強さの根源

東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第7回は日本女子サッカー界の育成・強化を支えてきたクラブのオハナシです。

ベレーザの強さの根源 ~メニーナ上がりの選手を「愛のあるスパルタ」で一人前に~

6月下旬、梅雨に入り蒸し暑さが体にまとわりつく季節になった。夜のヴェルディグラウンドはまだ肌寒い。日テレ・ベレーザの練習が始まった。ウォーミングアップ、シュート練習とメニューをこなし、紅白戦が始まる。控え組中心のメンバーには、男性コーチが加わる。レギュラー組のセンターバックに入った彼女は、鋭い出足でインターセプトを狙う。男性コーチとの競り合いにも臆することなく体をぶつける。裏へのカバーリングもお手の物だ。

土光真代は、今シーズンから正式にベレーザの一員となった。昨シーズンのレギュラーだった村松智子が怪我で戦列を離れていたこともあり、紅白戦ではレギュラー組でプレーし続けた。そして開幕戦でスタメンの座を掴むと、U-17女子日本代表の候補合宿で不在だった第2節以外は、全てフル出場を果たした。

主力として過ごした前半戦を振り返ってもらおうと呼び止める。こちらをまっすぐ見つめ、質問の意図を汲み取り、丁寧に答える。5月に16歳になったばかりとは思えぬ落ち着きぶりだ。

「最初の頃は、なでしこリーグにまだ慣れていなくて、それでビビってしまう所もありました。周りのフォローに助けてもらうばかりでしたけど、試合を重ねていくうちに、自信を持ってプレーできるようになったと思います」

新人としてではなく、ベレーザの選手という基準

ところで、今年4月に高校生になったばかりの少女が、なぜ日本女子のトップリーグで通用しているのか。そこには、ベレーザの伝統があった。「愛のあるスパルタ」 そう表現したのは、ベレーザを率いる野田朱美監督だ。その言葉の意味を説明してくれた。

「メニーナから昇格してきた新人ということではなく、ベレーザの基準で先輩達が見てくれる。だから文句の言われ方も半端じゃないし、バンバン要求もされる。“真代にもできるでしょ”と。最初の数ヶ月はよく泣いていた。でも、そこを乗り越えて成長していくもの。こういう環境があるというのは、本当に幸せなことだと思う」

土光にこの話を向けてみる。当時を、といってもつい数ヶ月前のことだが、懐かしむように振り返る。 「最初はついていくだけで必死でした。メニーナにいた時は自分のできるプレーをすれば大丈夫だったけど、ベレーザはみんな上手いので、本当に大変なんです」

ベレーザの下部組織である日テレ・メニーナでは、セレクションを勝ち抜いた少女達が高みを目指し、技を磨いている。中学生主体で構成され、高校や大学の女子チームと戦うのが日常。そして、その中で結果も出す。今年初めに行われた全日本女子ユース選手権で、メニーナは優勝を果たしたのだが、決勝の相手は現INAC神戸レオネッサの京川舞、仲田歩夢を擁した常盤木学園高校だった。元々ポテンシャルの高いメニーナの中で、更に突出した選手がトップチームに入る。

「みんなべレーザに昇格することだったり代表に入ることを目標にしているから、意識は高かったです。例えばクロスの練習でも、1本1本集中してこだわっていた。そういう所が他のチームとは違う部分だと思う」

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