#159 10/2 東京国体サッカー成年男子 決勝 東京都選抜 vs 岐阜県選抜
流れるようなコンビネーションも見せたが
後半7分、MF小島暢明のCKにDF安藤謙がドンピシャのタイミングでヘッドを放つも、枠を捉えられない。ボールを動かしながら相手の隙を伺う東京都は、26分にこの日最大のチャンスを迎える。
途中出場のFW岡元思帆が落とし、本橋がダイレクトで縦パスをつけてそのまま走る。山本からのリターンを受けた本橋がヒールで残すと、これを山本が右足で狙う。しかし完璧に捉えたはずのシュートは、右ポストに弾かれ同点ゴールとはならなかった。
最も東京都らしい攻撃だった。少ないタッチでパスを回し、マークを剥がす。最後の本橋のヒールには、守備に戻った岐阜県の選手全員が出し抜かれた。高い技術を備える東京都だからこそ生まれたビッグチャンス。だが、スコアは変わらず0-1のまま。
終盤にはパワープレーを仕掛け、タッチラインを割ると安藤がロングスローで一気にゴール前へ放り込む。だが、そのスローインを小島が渾身のヘッドで狙うも決まらず、試合終了のホイッスルが吹かれた。東京都は2000年大会以来の決勝進出だったが、あと一歩の所で涙を飲む事となった。
「あまり負けた気がしない」とは本橋の言葉だが、ボールを支配し続けた東京都の選手達全員がそう思っているだろう。ポゼッションを重視するチームは、カウンターやセットプレーに沈む事が多い。この日の東京都がまさにそれで、「相手からしたら、してやったりの展開だったのかなと」(本橋)
準優勝の意味
試合後、選手達は悔しさに覆われた。しかし、それだけではなかった。
ゲームメイカーでありムードメイカーだった本橋は、「正直決勝まで来られるとは思っていなかったので、胸を張って帰りたい」と話した。
「このチームで勝って終わりたかったですけど、最後まで諦めずにやれたので、準優勝でも納得出来る部分はあります」
高い個人技で状況を打開した朴も、この結果を受け入れようとしていた。
一人ひとりの技術をベースとした流麗なパスワークは、見る者を魅了しただろう。そんな東京都は、単独チームではない。優勝した岐阜県は、全員がFC岐阜SECONDの選手で構成されていた。東京都が準決勝でぶつかった岩手県も、グルージャ盛岡の単独チームだった。選抜チームの東京都は限られた時間で集まり、練習を重ねながらコミュニケーションを取り、そして成熟していった。「みんな上手い」とどの選手も口々に話していたが、本当に全員の能力が高く、“サッカーを知っている”という言葉が当てはまった。そんな選手の集合体だからこそ、高いクオリティを発揮する事が出来た。この準優勝は、東京都のレベルの高さを示す結果でもある。