#7 日テレ・ベレーザ 野田朱美監督インタビュー Vol.1
-そうですね。ピッチを幅広く使ったサイドチェンジのパスがあるからこそ、中央からの崩しが活きる。
野田 でも、女子の場合はその大前提が元々ないから、ただ男子の真似をしても面白くはないんですよ。当然ですが、男子は狙えるならずっとそれを狙ってゴール前に突っ込んでいくし、ゴール前に迫力が生まれて、面白味が出てくるんです。でも女子の場合それが無く、『細かく繋いでいく』のが大前提ですよね。当然それを突き詰めていく事にも面白味はあると思いますが、見ている者の心を動かすのは、やはりゴール前だと思うんです。あと、裏のスペースへの勝負だったり、単純なモノが見たいという人は多いと思う。その両面を女子サッカーは突き詰めていかないと、エンターテインメントとして成り立たないのでは?と思っています。
-両面を突き詰めていってこそ、エンターテイメントに繋がるんだと。
野田 日本女子サッカーが本当の『プロフェッショナル』になりたいのなら「お金を払ってでも見たい」という人を作らないといけない。それが本当のプロだと私は思っていて、「じゃあ、今そこに行き着いているの?」と言ったら、絶対そうじゃないと思うんですね。だから、まだまだやらなければいけない事が沢山あると思っています。
-ピッチ内外で活躍された野田さんならでは、の発想ですね。
野田 多少、時代に逆行するかもしれないですが、もっと大きく展開できる時はチャレンジしていかないと。細かいパスサッカーだけでは飽きてくる。バルセロナも繋ぐと言うけど、やはり一発でいく時は必ずいくし、「その大前提から逃げてはいけないな」という想いがあります。女子サッカーをもっと『見てもらえるスポーツ』にしたいです。その中で自分もプレーしていて感じた事、実際に監督として見ていて感じた事、「もっともっと前に行けば良いのに」と単純に思うところを、今、伝えています。多分それが去年1年間の変化の表れですかね。裏への飛び出しとか、そういう攻防がなければ、なかなかスペクタクルなサッカーにはならない。そういう想いですね。
「不安と期待の両方を抱え、選手達と共に成長した1年目」
-2010年の主力選手が多く抜けた中、監督1年目という事で不安が大きかったのか、それとも一からチームを作り上げる楽しみの方が大きかったですか?
野田 どちらも大きかったです。本当にフィフティ・フィフティでした。でも不安というのは主力選手が抜けた事では無いんです。主力が抜けた事に対しては、ベレーザには良い選手が幾らでもいるという自負もあったし、良い選手は作ればいいという想いもあったので、不安はありませんでした。
-なるほど。では、どういった面で不安があったのでしょう?
野田 環境面で去年は失ったものが沢山ありました。グラウンドやその他も色々な事が縮小になり、現実的な問題が沢山あった。それを選手達がどこまで受け入れられるのか?という不安の方が実は大きくて、最初はその気遣いが逆に悪い結果として出たんだと思います。連敗したのも、監督として自分の迷いや不安があって、選手に影響してしまったと思います。
-2011年シーズン全体を振り返って、手応えや苦労した部分は?
野田 今言った事が全てですね。どこかで環境のせいにしていたという事が一番大きかったのかなと。特にリーグ前半戦は「こんな環境だから」とか「震災でグラウンドが使えない」とか、そういった色々な要素を、結局は自分自身の言い訳にしていたと思います。リーグ戦2連敗して痛い目にあって、そこで負けて逆に良かったんですけど、自分でもどうしたら良いんだろうと考えた時に、「人数がいないとか、そんなこと言ってもキリが無いし、今いるメンバーでやるしかないし、与えられた環境でやるしかないし、嫌ならクラブを辞めてくれて良いよ」という開き直りが、ポン!と生まれたんですよね。しょうがないじゃんって(笑)
(了)
~Vol.2に続く~