#7 日テレ・ベレーザ 野田朱美監督インタビュー Vol.1
-監督というキャリアをスタートする上で、参考にされた方はいたんですか?
野田 実は、自分が現役の時から一番憧れていた選手は、川勝良一さん(元・読売クラブ選手、現・東京ヴェルディ監督)なんですね。ずっと大好きで、ご本人もよく知っていると思うんですけど(笑)川勝さんをずっと見てきました。川勝さんが引退した後、指導者としてヴェルディユースの監督で戻ってきた時も、私はまだ現役選手だったので、川勝さんは常に近くにいましたね。
-まさに憧れの選手だった方が、トップチームの監督として居たと。
野田 これは本当に偶然ですけど、自分がベレーザの監督に就任した時も、川勝さんがヴェルディの監督でいた。意識は全然していないし、指導者として川勝監督にソックリという訳ではないですけど、トップの練習もよく見に行くし、それは一つ自分の中では大きな指標にはなっています。
「女子サッカーにお金を払って見に行く人を作らなければいけない」
-野田監督のサッカー観や哲学はどういうものなんでしょうか?
野田 シンプル・イズ・ザ・ベストかな、やっぱり。私もベレーザで色々な細かい技や、俗に言うショートパスを沢山繋いで、といった事を徹底的に教わったし、現役時代もそういうプレーは得意としていました。だけど、やっていくうちに、どんどん突き詰めていくうちに、究極のテクニックって『ワンタッチのプレー』だな、と。テクニックを突き詰めていくとワンタッチに辿り着く。シンプルに見えるけど、ワンタッチ、ツータッチでポンポンと回す。
-シンプルなワンタッチプレーが究極のテクニック?
野田 それこそバルセロナじゃないですけど、それが一番のテクニックというのが頭のどこかにあるので、シンプルなチームこそ強いというが自分のサッカー哲学というか、信念ですね。こねくり回す事ではなくて、判断と技術と全てが揃った時にワンタッチ、ツータッチで崩す。その為のプロセスとして、細かくゴチャゴチャ持つのも当然できて、狭い局面も打開できないといけないけれど、そこ(シンプルなプレー)に行き着けばベストですね。
-それは監督に就任当初から目指していこうと思っていたのですか?
野田 昨シーズンを見てくれた方は気付かれたかと思いますが、今までとは若干異なって、意外と前に速くなりましたよ。「ベレーザちょっと変わったよね」と思っている方も沢山いるんじゃないかな。ベレーザがパスを繋げるのも、テクニックがあるのも、ここの子達はそうやって育っているのも、分かっているんです。だけど結局サッカーは前に進まないと駄目だと。これは自分の想いでもあるんですが『「女子サッカーもエンターテインメントにしていかないと駄目』だと思うんです。
-女子サッカーをエンターテイメントに、ですか。
野田 自分でも監督をやりながら見ていて思うんですけど、正直、面白いか面白くないかで言ったら、まだ面白くないんですよ。1試合を通してずっと見ていられるかというと、私はそうではないと思っています。例えば男子の場合、『右サイドバックから左ウイング(逆サイド)や(DFラインの)裏に蹴れる』という大前提があって、でもそれだけやっていても当然勝てないから、『それがあるから崩しがある』という大前提があるじゃないですか。