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『いしかわごうのウルトラなる挑戦記』 第6回 失敗から学ぶこと

第6回(最終回) 失敗から学ぶこと

ウルトラマンの最終回「さらばウルトラマン」を見たことがあるだろうか。

子供たちのヒーローであるウルトラマンが、最強の怪獣・宇宙恐竜ゼットンに負けてしまうという衝撃的な回である。なにせ八つ裂き光輪はバリヤーで防がれ、決め技であるスペシウム光線を腕から吸収してはね返されるなど、絶対的な存在だったウルトラマンが完膚なきまでにやられてしまうのだ。自分はリアルタイムで見ていた世代ではない。ただウルトラマンが勝つことが常識だった当時の子供達にとって、その常識が覆される展開というのは、かなりショッキングだったのだろうと思う。

そこで今シーズンのクライマックスとなった「なでしこリーグ&チャレンジリーグ入れ替え戦」である。そんなウルトラマンの最終回になぞられるわけではないが、スフィーダ世田谷FCは敗れた。まずはこの話に触れないわけにはいかない。

11月24日、加古川運動公園陸上競技場で行われた入れ替え戦の第2戦。相手はFC吉備国際大学Charme。ホームの第1戦を0-1で敗戦していたスフィーダは、第2戦の後半、田中麻里菜のゴールで1-0として2戦合計1-1として90分を終了した。勝敗は延長戦でも決着がつかず、最後はPK戦までもつれた。そのPK戦は4-5で惜敗。なでしこリーグ昇格の切符まで、もう少し・・・あと1歩のところだったが、惜しくも届かない結果となった。

サッカーの世界では「1点の差」、「1勝の差」、「勝点1の差」、そして「得失点1の差」で涙を飲むことはあり、それを「あと1歩だった」と表現することはよくある。しかし今回のスフィーダは、延長戦を終えて、PK戦までもつれた末でのPK1本の差だった。そういう意味では、本当に「あと1歩」だったと言っていいと思っている。

何かが足りなかったと言えば、それが事実だろう。ただ印象的だったことがある。第1戦を0-1で終えた試合後、川邊監督が第2戦に向けて話してくれた言葉だ。

「まだ前半をリードされているだけです。今日の結果を受けて、やることは一つだけだと思ってます。それは自分たちのサッカーをやる事。むこうに行って、良いゲームをやりたいですね」

自分たちが積み上げてきたもの、そしてそれが拠りどころとしてしっかりと持っており、それをピッチで表現するということ。それでダメだったら、その時は仕方がない・・・チームにはそんな開き直りが感じられた。この言葉は強がりでは無かったと思う。川邊監督自身にも、このプレッシャーをどこか楽しんでいるような余裕もあったからだ。そして指揮官がこういう立ち振る舞いをしているチームには、得てして良い結果が転がるものである。第1戦では相手に飲まれてしまった感のあったスフィーダが、第2戦で格上相手に自分たちのスタイルで堂々と渡り合うことができたのは、こういった川邊監督の姿勢もあってのことではないかと思っている。

結果に対して「弱いから負けた」、「力が無かったから昇格できなかった」と真摯に受け止めて、自分たちに足りなかったものを埋めていく姿勢は必要である。ただその一方で、やるべきことを全力でやったならば、こうした失敗経験はスフィーダ世田谷の血となり肉となって、得難い財産としてこれから受け継がれていくとも思っている。

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