#20 FC KOREA 勝負強さを体現しリーグ制覇 2度目の地域決勝へ
東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第20回コラムは、関東リーグ1部 初優勝を遂げた在日コリアンクラブ“FC KOREA”の今季を振り返ります。
FC KOREA 勝負強さを体現しリーグ制覇 2度目の地域決勝へ
チームワークという立ち戻るべき場所
「ナンバーワン!ナンバーワン!」
この日の為に作った優勝記念Tシャツを着て、選手達は喜びを爆発させた。9月22日・最終節までもつれた関東サッカーリーグ1部をFC KOREAが初めて制した。圧倒的な強さを誇ったわけではない。むしろ、危機的状況に直面する中で勝ち取ったタイトルだ。今シーズンのKOREAの戦いを振り返ると、“しぶとさ”という言葉がぴったり当てはまる。
「僕らの強みはチームが一つになれる事」と、MF朴世訓は常々話してきた。個人が先に来るのではなく、まずはチームという考えがある。だからこそ、苦しい時でも誰か一人の奮闘が目立つのではなく、ピッチに立つ11人が自分の役割を全うしようとした。昨年は、そのチームワークを武器に全国社会人サッカー選手権大会で優勝し、“全社王者”という勲章を携えて今シーズンを迎えた。「そういう風に見てもらえるのは嬉しいですけど、まだそういう器ではない」と、春先に朴は言った。過度なプレッシャーを感じる事なく、あくまでチャレンジャーとして戦おうとしていた。
チームがスランプに陥ったのは7月。全社・関東予選で敗退し、全国2連覇という目標を失った。それが尾を引くように、再開後のリーグ戦では1分2敗と3試合未勝利。結果が出ず、暗闇を彷徨った。後期第5節・エリースFC東京戦を0-2で落とした後、朴は悔しさを押し殺しながらこう言った。
「今年は選手それぞれの発信がなかなか無い。だから、いざという時に誰が何を考えているか分からなかったり、一つにまとまれない部分があります。変われるキッカケを作らないといけないですし、今すぐにでも変わらないとズルズルいってしまう」
誰もが悔しかった。しかし、例えば昨年の全社で見せたような一体感を、なかなか生み出せない。チームワークが最大の強みであるはずのKOREAは、最もなくしてはならないものを失う寸前まで来ていた。だが、チームがまとまれば結果が出るというのは、昨年の経験からもわかっている。立ち戻る場所がある事が、KOREAを踏みとどまらせた。3戦未勝利で迎えた第6節。当時首位のヴェルフェたかはら那須戦で、KOREAは見違えるようなプレーを見せた。試合開始2分にDF洪正樹がヘディングで電光石火の先制点を奪うと、そのまま勢いを落とさなかったKOREAが、大一番を3-1でモノにした。
試合後、監督も務めるDF黄永宗は安堵の表情を浮かべていた。 「もがいてもがいて、2ヶ月ぶりくらいの勝利ですからね。苦しかった。今日結果を出せたので、ラスト3試合に可能性を残せたと思います」 この勝利がチームを蘇らせ、同時にKOREAらしさも取り戻すことが出来た。こうして彼らは、右肩上がりの状態で最後まで走り抜いたのだった。