第24回 東京23を知りたい
誰も知らない
フットスクエア江東・森下は、ごくごく一般的なフットサル場だった。東京メトロ清澄白河駅から徒歩8分。小名木川沿いの倉庫の屋上にある。8月2日、関東リーグ1部の東京23フットボールクラブが、ここでトレーニングを行うことになっていた。
なぜ、私が東京23に興味を持ったか。7月24日、東京都サッカートーナメント社会人系の部、FC町田ゼルビアと対戦したゲームを観たのが直接の理由だ。試合は1‐0で東京23が勝利した。東京23は統率された守備で町田の攻撃を封じ、数多くのチャンスをつくった。町田の楠瀬直木監督は「結果、内容ともに相手が上回っていた」と完敗を認めた。チームの格からすれば、JFLの町田が断然上である。町田は昨季までJ2で、選手の質、量ともに東京23をはるかにしのぐ。
東京23の指揮を執るのは、米山篤志監督だ。現役時代は東京ヴェルディ、川崎フロンターレ、名古屋グランパス、栃木SCで活躍し、J1・244試合、J2・54試合に出場。日本代表に選出された経験も持つ。はたして、東京23はどのような環境で練習し、そこで米山監督はどういった仕事をしているのか見てみたかった。
練習開始は、午後9時半。30分前になると、ぽつぽつ選手が集まってきた。ところが、いつまでたっても肝心の米山監督が現れない。私はコーチらしき人に「あの、監督は?」と訊ねた。すると、「今日はナオキフレンズとして試合に行っています」とのこと。はて、ナオキフレンズ? 故・松田直樹さんの追悼試合だ! ナンテコッタイ、せっかく来たのによりによって監督が不在だなんて。参ったなぁ、と自分のスケジュールを確認し、今回は締切りに間に合いそうもないと東京偉蹴の編集部に連絡した。(というわけなんです。更新が遅れてごめんなさい)。
このまま手ぶらで帰るのはもったいないし、しばらく練習を見ていくとしよう。この日、集まった選手は7、8人。10分くらい遅れてスーツ姿で現れ、慌ただしく着替える選手もいた。東京23にプロ契約選手はいない。全員、何らかの仕事を持っている。
ボール回しで身体をほぐしたあと、フィジカルトレーニングに移った。3列に分かれ、コーチがパンッと手を叩き、ダッシュ、ダッシュ、ひたすらダッシュ。フットスクエア江東・森下はコートが4面あり、ほかはエンジョイ・フットサルでわいきゃいやっている。そこで、揃いのトレーニングウェアに身をつつみ、全力ダッシュする男たちは異様に浮いていた。
関東リーグ1部のチームには、誰も見向きしない。存在すら気づかれない。「こないだ、JFLの町田を破るという、けっこうスゴイことをやってのけたんですよ」と言っても、たいした関心は集めないだろう。そうか、これが東京23の現在地なんだな、と思う。