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第24回 東京23を知りたい

米山監督は駒澤大学の出身だ。大学サッカーもそういったバラつきがあるが、それとは質が違うのだろうか。
「違いますね。大学の場合、先々の進路は別にして、4年間で燃え尽きようとする姿勢がある。もっとも、これは選手だけの問題ではない。むしろ、選手は厳しい環境でよくやってくれていると思います。支援していただいている企業を含め、自分たちコーチングスタッフ、フロント、クラブ全体がいかに一丸となるか。これが口で言うほど簡単ではないんです。ぎゅっと結束することもあるけど、ほわっとほどけるのも早い」

結束の特効薬は、やはり何よりも結果だという。それも関東リーグ1部の好成績より、もっと分かりやすい快挙が求められる。
「天皇杯出場は大きな目標です。昨年は惜しいところまでいって逃したので、絶対に獲りたい。このチームは攻撃面に良さがあり、大舞台に強いんですよ。その一方、そこらの原っぱでやるような閑散とした試合ではコロッと負けたりするのが困ったところで」

昨年、天皇杯出場が懸かった東京都サッカートーナメントの決勝では、横河武蔵野FCにPK負けを喫した。それも二度リードを奪いながら、追いつかれての敗戦だ。雪辱の思いは強い。ところで、米山監督は自身のキャリアについてどう考えているのだろう。下から指導者の経験を積み、ステップアップを志すのか。

「いま僕が持っているのはB級ライセンスです。来年、A級ライセンスを取りに行く予定ですけど、その先はまだはっきり固まっていません。先々を見据えて、もっと広い視野でサッカーを勉強したい気持ちもある。いまは現場を任されているので自分の力を全部注いでいますが、東京23というクラブでほかにも役立てることがあるかもしれない」

こうして話している私たちの背後には、巨大な日産スタジアムがそびえる。現在、Jリーグで戦う新興クラブも、かつては東京23と同じようなところからスタートした。このチームが7万人収容のスタジアムで喝采を浴びる日。その日が来ないと誰に言い切れるだろう。

「いや、隣との距離は見当もつかないです。そもそも見えてないですね。こんなに近くにあるけど、自分たちにはまったく見えない。日々の課題が多すぎて」

と、米山監督は苦笑する。8月22日、東京都サッカートーナメント準決勝、会場は味の素フィールド西が丘。東京23は日本体育大学と対戦する。あとふたつ勝てば、全国の舞台だ。

(了)

(著者プロフィール)
海江田哲朗(かいえだ・てつろう)
1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディに軸足を置き、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『サッカー批評』『週刊サッカーダイジェスト』『週刊サッカーマガジン』『スポーツナビ』など。著書に東京ヴェルディの育成組織を題材にしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)。

海江田哲朗 東京サッカーほっつき歩記は<毎月第1水曜日>に更新します

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