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#5 2012シーズン序盤を振り返る~FC東京・前編

東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第5回はリーグ&ACLを戦うJ1・FC東京の「2012シーズン序盤を振り返る(前編)」です。
(#3 東京ヴェルディ編はコチラ  #4 FC町田ゼルビア編はコチラ

~前編~ 「果敢なるスタートダッシュ」

ランコ・ポポヴィッチ監督は、上ずった声で思いの丈を露わにする。それは『ファミリー』と称するFC東京の選手達だけではなく、報道陣に対してもだ。それは、東京のフットボールシーンを盛り上げるため。ただ一心である。

「東京も名古屋も称賛を受けるに値する内容で、試合を見に駆け付けた、サポーターの皆さんには満足してもらえたかと思います。ただ、一つだけ皆さんにも強く伝えておきたいことがあります。」

試合後にこう指揮官が語った、ホーム開幕戦のJリーグ第2節・名古屋グランパス戦。昨シーズンJ1リーグ・2位だった強豪に対して、前半は名古屋の特徴であるフィジカルを全面に打ち出され、36分に名古屋・FW玉田に抜け出されてゴールを許し、0-1で折り返した。しかし、後半に入ってからは東京のショートパスサッカーが炸裂する。後半14分からの14分間で3ゴールを叩き込む破壊力は圧巻だった。

「90分間、自分たちのリズムでやり続けるんです。そうすれば今日みたいに結果はついてくる。」 殊勲の2得点を挙げたMF石川直宏も、上気した表情で語ったスペクタクルなゲームだった。

それでもポポヴィッチ監督は、1つの点に納得をしていなかった。冒頭のコメントの続きである。「このような素晴らしい試合を見る機会を得るために、テレビの前だけではなく、味の素スタジアムに都民の皆さんが駆け付けてほしい。」

東京都民を魅了できるか? ポポ・トーキョーの挑戦

試合開始時の気温は7.6℃と非常に冷え込んだ中の環境だったとはいえ、ホーム開幕戦に駆け付けた観客数は味スタの収容人員数の半分にも満たない、21,757人。今季のスローガンである『C.O.A FOOTBALL』≪C=Collective(組織的),O=Offensive(攻撃的),A=attractive(魅力的)≫の実現に向けては、観客と醸し出す三つ目の『A』がいささか物足りないものに映ったのかもしれない。

そんなジレンマを抱えながらも、第3節の神戸戦でも2-0で勝利し、開幕戦の大宮戦での1-0を含めるとリーグ戦3連勝。序盤戦でFC東京はスタートダッシュに成功した。序盤のビルドアップで混乱をきたした大宮戦では、前半30分以降から長谷川アーリアジャスールと梶山陽平のポジションを入れ替え、背番号10がトップ下に入るとルーカスと抜群のコンビネーションを発揮した。このシステムによって、中央でのタメが2枚できて、石川、谷澤達也らのスピーディーな飛び出しを発露させる回数が増加。現状の攻撃の軸と言っても差し支えないレベルにまで昇華されている。

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