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#13 日テレ・ベレーザ2012シーズン回顧(後編)

東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第13回は今季なでしこリーグ2位で終えた日テレ・ベレーザのシーズンレビューです。

日テレ・ベレーザ2012シーズン回顧(後編) 前編はコチラです

更なる高みを目指したことが、かえってバランスを欠くことに

宿敵・INAC神戸レオネッサに勝ってリーグカップを制したベレーザは、目標としてきたタイトル獲得を達成した。チームはこれを境に、戦術を若干変えてリーグ後半戦に臨んだ。伝家の宝刀とも言える、ショートパス主体のサッカーを更に高める道を選んだ。リーグ前半戦は、ベレーザは縦へのスピードをかなり意識していた。アーリークロスの数が増え、後方から長いボールを送ることも厭わず、早いアクションでゴールへと迫る。細かいパスワークだけでなく、シンプルな攻撃も積極的に取り入れた。

「今シーズン、前へ前へというサッカーの先駆けはベレーザだったと思う」と野田監督は語る。ゴールへ向かう迫力が技巧派のチームに肉付けされていった。そんな中で、リーグカップ後からは、従来のスタイルをより色濃くしていくことになる。野田監督は“縦への速い展開”もオプションとして持ちつつ、十八番のパスサッカーを極めることを決意する。自分達の強みを最大限に活かすことが、勝利への近道なのは間違いなく、パスで崩す攻撃はベレーザのアイデンティティでもある。

だが、結果的にそれが裏目に出てしまった。攻撃に意識が傾き過ぎたことで、攻守のバランスを欠く場面が目立つようになった。特に岡山湯郷Bell戦は勝利こそしたものの、チームの問題点がはっきりと浮かび上がった。中盤から前の選手達がゴールを奪おうと前がかりになっている時、ディフェンスラインは湯郷の攻め残りの選手達と数的同数、あるいは数的不利の状況に晒された。

春先に野田監督が掲げた「攻めながら守備のバランスも考える」という約束事が、ピッチ上で表現されていなかった。ゴールに向かってイケイケの状態になることは、高い攻撃力を有するベレーザらしいと言えばそうなのだが、カップ戦までは出来ていたリスクマネジメントが出来無くなっていた。

このような状況を、試合の中で修正することも出来ない。「少しでも方向性を見失うと、みんながパスを繋ぐことに情熱を注いでしまう」と野田監督は言う。狭い局面での打開に固執し過ぎるあまり、自分達のプレーの幅も狭めてしまった。ショートパスを重視しながら、ディフェンスラインの裏を狙うこともテーマとしてあった。だが、「(永里)亜紗乃が凄く良い動きで裏へ抜け出ても、そこは視野に入っていない」(野田監督)という状況は、チームの課題を浮き彫りにしていた。

攻守のバランスの欠如が表面化したのは10/21岡山湯郷Belle戦だったものの、それ以前から予兆はあった。10/6の伊賀FCくノ一戦の後半は、その一例だ。相手のクロスボールを跳ね返しても、セカンドボールを拾うのはことごとく伊賀の選手達だった。瞬間、瞬間に何をすべきなのか、チームとして共有されていなかった。

この点についてGK松林美久がこんな見解を聞かせてくれた。 「リーグが進めば課題や収穫が出てくる。それらがドンドン溜まって、少し頭でっかちになってしまったと言うか。色々考え過ぎてしまう所があった」

勝利のために様々なことを試したベレーザだが、チーム強化の過程で袋小路に迷い込んでしまった面もある。それが攻守のバランスの欠如として表れ、勝点3の取りこぼしに繋がった。ただ、自らアクションを起こし、現状に満足することなく更に上を目指すことは、チームが強くなるためには重要なことだ。リーグ後半戦、チームは産みの苦しみを味わったと言える。

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