#12 日テレ・ベレーザ2012シーズン回顧(前編)
東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第12回は今季なでしこリーグ2位で終えた日テレ・ベレーザの2012シーズンレビューです。
日テレ・ベレーザ2012シーズン回顧(前編)
なでしこリーグ最終節、雨の長居スタジアムで日テレ・ベレーザはINAC神戸レオネッサに0-4の完敗を喫し、シーズンを終えた。女王の座を奪い返すことはできず、昨年に続き2位でのフィニッシュとなった。無敗優勝を成し遂げたINACが強かったのは間違いない。だが、ベレーザにも優勝を逃した理由はある。
総力戦でシーズンを戦う
今シーズン、ベレーザがベストの布陣で戦える試合は決して多くなかった。今年はフル代表、U-20、U-17と各年代の世界大会が行われる年だった。それぞれの代表候補を複数人抱えていることから、野田朱美監督もシーズン開幕前からメンバーの離脱は覚悟していた。そして、ロンドンオリンピックに臨むなでしこジャパンに4人(DF有吉佐織はバックアップメンバー)、U-20女子W杯には5人(代表合宿中にDF村松智子が負傷)、更にU-17女子W杯にも2人を送り出した。候補合宿が重なり、チームの練習がままならないこともあった。
だが、「今年は女子サッカー界にとって本当に大事な年になる」と野田監督は言い、代表の活動に協力を惜しまないことを明言していた。日本女子サッカーの過去と現在を知る野田監督だからこそ、代表で選手が抜けることもむしろ歓迎していた。
そんな中で、シーズン前から主力の怪我というアクシデントが発生した。今年1月、右第五中足骨の手術に踏み切ったFW岩渕真奈は、リハビリの末にリーグ前半戦を戦い抜いた。
しかしロンドンオリンピック後、同箇所の再手術とリハビリの為、リーグ後半戦は一度もピッチに立っていない。新加入のMF阪口夢穂の離脱も痛かった。ショートパス主体のベレーザにあって、中長距離のパスで試合のテンポを変えられる貴重な選手だった。彼女も10月に左膝半月板を損傷し、戦列を離れざるを得なくなった。
なでしこジャパンの2人を失いながら、控え選手の活躍によってチーム力が急降下する事態は避けられた。攻撃が売りのチームだけに、前線には様々な特徴を持った選手がおり、岩渕の抜けた穴は攻撃力のある選手達が埋めていく。MF小林弥生は持ち前の高い技術と豊富な経験を武器に、岩渕とは違った持ち味を惜しみなく発揮した。小林の他にもFW田中美南が起用されたり、中盤のレギュラーであるMF伊藤香菜子やMF木龍七瀬がFWを務めることもあった。そしてFW永里亜紗乃も、ストライカーとしてシーズンを通して仕事を果たした。前線のパートナーが代わる中でもゴールを奪い、前線の起点であり続けた彼女の存在も忘れてはならない。
阪口の離脱による影響は、MF隅田凛の台頭に救われた。豊富な運動量と、最後まで諦めない姿勢を前面に押し出したルーキーは、なでしこリーグカップでスタメンの座を掴んだ。そして決勝のINAC神戸レオネッサ戦では、なでしこジャパンの主力達を向こうに回しながら臆することなく挑んだ。経験と個人技で勝るベテラン選手に対しても必死に食らいつき、決定的な仕事をさせまいとするプレーがベレーザのタイトル獲得に繋がった。その後、U-17女子W杯でチームを離れたこともあり、レギュラーの座を掴み取るまでには至らなかったが、与えられた役割を全うした。