TOP>>コラム>>FOOT ISSUE>> #13 日テレ・ベレーザ2012シーズン回顧(後編)
footissue

#13 日テレ・ベレーザ2012シーズン回顧(後編)

ベレーザにはまだ、どんな試合も勝ち切るだけの“したたかさ”が欠けていた

ベレーザは、まだまだ強くなる。つまり今は成長の途中段階だ。では、今季のベレーザとINAC神戸レオネッサを比べた時に何が不足していたのだろうか。一つ言えるのは、INACは“勝ち方を知っていた”ということだ。チャンピオンチームは苦しい試合でも確実に勝点3を拾ってきた。一方、それが出来ず白星を取りこぼしたベレーザには、苦戦の中でも勝ち切る“したたかさ”が足りなかった。『勝者のメンタリティ』とも呼ばれる、目に見えない力を手にすることは容易ではない。

リーグカップ・タイトル獲得から暫く経ったある日、チーム練習後にMF伊藤香菜子はこんなことを言った。 「チームとして勝負強さがまだ足りない。前期も(6/10の)INAC神戸レオネッサ戦の前までに、伊賀FCくの一戦と浦和レッズレディース戦に引き分けていますし、そういう部分がINACとの勝点差にも表れている。優勝するためには勝負強さが必要」

またシーズン開幕前にはキャプテン・DF岩清水梓も同様のことを口にしている。 「単純にINACと比べると、向こうは波が小さいというか、悪い試合でも勝ち切れる。ウチはまだそれを学んでいる段階」

2人の言葉は今季のベレーザを象徴するものだった。 『 勝負強さ 』  一朝一夕で身につけられるものでないことは、誰もがわかっている。だが、この課題をクリアしなければ、頂点は近くて遠い存在になってしまう。

幸い、将来への見通しは明るい。ベテランと呼ばれる年齢になった選手達は、まだまだ高いレベルのパフォーマンスを見せられる。培ってきた戦術眼や戦う姿勢を、後輩達に伝えていくことができる。上の世代から下の世代への継承。その積み重ねこそ、ベレーザを常勝たらしめてきた。2年連続でリーグ優勝を逃している今こそ、ベテラン達の更なる奮起が不可欠で、若手達は学ぶことを怠ってはならない。

そしてチームの未来を担う若手も、伸び盛りの楽しみな選手達ばかりだ。ヤングなでしこ、リトルなでしこに合計7人を送り出しており、彼女達の成長が今後のベレーザを左右することは間違いない。とりわけDF土光真代は、リーグ全体を見渡しても今シーズン最大の発見だったのではないか。レギュラーと目されていた村松が怪我で不在となり、センターバックの席がひとつ空いた。土光は下部組織の日テレ・メニーナから昇格してきたばかりの高校1年生だが、そんなことを微塵も感じさせないクレバーなプレーを見せた。

年齢的にリトルなでしこのメンバーながら、飛び級でU-20女子W杯に出場。その後は出場機会を失ったが、それでも彼女の残したインパクトは色褪せていない。ベンチに座ることになっても、昇格1年目だからといって割り切るのではなく「本当に悔しい」と、正直な気持ちを隠すことはなかった。

シーズン中、野田監督は「全員が戦力」と何度も口にした。代表の活動や主力の怪我などの事態を乗り切るためにも、欠けて良い選手など一人もいなかった。そして何より、若い選手もピッチに立てばしっかり役割を果たしてくれるという期待と信頼が、監督にはあったのではないか。優勝こそ逃したものの、2位は譲らなかった。そこには、若い選手達の貢献があったことも忘れてはならない。

念願だったタイトル獲得は達成した。だが「リーグ優勝してこそ本物」という伊藤の言葉が、今季のベレーザが最も欲しかったものは何だったのかを表している。監督も選手も手探り状態の中、もがき続けた昨シーズン。リーグ制覇への確かな道筋を見出した今シーズン。どちらも2位に甘んじたが、チームは確実に前進している。

来シーズンは真価が問われる年。再び頂点に返り咲く為に、まずは目の前の課題を乗り越える事が必要だ。

(了)

(取材・文/青木 務)

◆前後のページ | 1 2 |