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#26 FC町田ゼルビア 秋田監督解任で楠瀬氏に託されたもの


プレッシャーを喜びに変えなければならない

一方、楠瀬氏はこう語る。 「プレッシャーはどの試合だってある。だからそれは、正直言い訳にならない。ホームでたくさんのサポーターがいて、良いスタジアムがあって、その中でプレーする事で背筋が伸びる事はあると思う。でも、せっかくゼルビアのためにお金払って応援してくれているのだから、それを喜びに変えてやらなければいけはい」

そのパルセイロ戦後、全員でゴール裏へ挨拶に向かった。そこで、一部のサポーターとの口論が発生。サポーターの所へ向かった秋田監督は、「結果だけ出せば良いの?」と言っていた。秋田監督が、いかに困難なミッションを担っていたかかがわかる。

1年でのJ2復帰は必ず成し遂げなければならない。しかし、ただ勝ち点を積み上げて昇格するのでは、極端だが、意味がない。“ゼルビアのサッカー”というものを表現しながら、目標も達成しなければならない。そんな、二兎を追う難しさを感じながらの指揮だったのではないだろうか。

だからといって、この解任が間違っていたとも思えない。翌週にすぐ後期が始まるとはいえ、前期が終わったこのタイミングを一つの区切りとしたクラブの決断は尊重したい。空中分解していたわけではなく、秋田監督の下、チームは一枚岩となって戦っていた。「集団として逞しいチームになっていた。そこについて文句は無い」と楠瀬氏も評価している。

それでも今回の決断に至った。それは、クラブとしてこのような思いがあったからだ。

高い基準を掲げ、チームはそれに応えるよう努力する

「我慢しようと思えば、いくらでも我慢出来る。だけど、街の象徴になろうというクラブがどれだけ厳しいものか。そして素敵なものか。その基準を今は作っている所。ここは近隣にJのクラブがいくつもあるわけで、みんなおらが街にも素晴らしいチームがほしいと感じていると思う。(解任の決断が)早いと思う人もいるかもしれないけど、『町田ってサッカーを強くする街だな』という風にしたい。こういう街だから、基準はこうなんだと」

だからこそ大事なのは、ここで停滞せずに、戦い続ける事だ。楠瀬氏は、先走る事へ警鐘を鳴らす。

「J2に上がるとか、みんな先ばかり見てしまう。でも、まずは今度の日曜日(6/30ソニー仙台戦)でしょうと。試合が終わった時に相手より1点でも多く取れているか、その積み重ねだから。先を見る事は良いけど、『今日、何をするんだ?』と。そこは気をつけないといけない」

シーズン途中での監督解任という事態となったが、J2昇格という目標が変わる事はない。その為にはまず、後期初戦のソニー仙台戦を全力で戦わなければならない。そして勝利には、もちろんサポーターの声援が不可欠だ。青く染まった野津田競技場で、ゼルビアに関わる全ての人達が歓喜に沸く。そんな光景が見られれば、FC町田ゼルビアの新たなスタートにも希望が持てるはずだ。

(了)

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