#17 横河武蔵野FC 依田博樹 強化担当 インタビュー Vol.2
「選手が個を伸ばし、人としても成長する。 そんな人間を武蔵野から輩出したい」
-社会人チームは「人として成長する場でもある」と。
依田 チームの成長と個人の成長、どちらが先かという事はありますけど、我々が選手達に求めているのは“個”が伸びる事です。トレーニング場といった環境面だけでなく、我々がしっかりサポートしてあげる事で、チームがうまく回っていくようにしたいと思います。
-『今はJリーグを目指さない』という立場で、既にアマチュア最高峰リーグのJFLに所属しています。これ以上、上を目指すステージがない中、ファンの人に勝敗以外で横河に目を向けてもらうには何が必要でしょうか?
依田 これはJクラブも言っていますけど、サッカークラブが地域に根ざす事は絶対に必要だと思います。地域貢献活動とよく言われますけど、夢を持つ子供達に対して何らかの形で携わりたい。一人でも多くの子供達が、色々な選手に、そして良い人間になって武蔵野市から輩出される事。我々で何か手助けが出来れば、クラブの存在価値は上がるのかなと思います。
-これまでに地域と連携したイベントやプランというのは何かありましたか?
依田 運営事務局スタッフがいつも考えてやってくれています。ですが、現場レベルで何か考えるという事は、役割として持っていなかったですね。我々、強化の立場としては、例えば『選手を使わせて欲しい』と事務局から言われたら協力します。「武蔵野市をより良くしていきたい、多くの人達に見に来てもらいたい」という思いはもちろんあるので、色々な事に協力していきたいなと思います。
-ところで、今年のJFL全体の勢力図をどう見ていますか?
依田 町田ゼルビアは、秋田監督が吉田さんの後輩ですから楽しみですね。戦力的にかき集めているのはツエーゲン金沢かなと思います。町田もそれなりに選手は残っているでしょうけど。
-昨年、SAGAWA SHIGA FCがJFLから撤退しました。依田さんが個人的に感じる事はありますか?
依田 良いチームでしたよね。チームを築き上げた中口(雅史)さんが素晴らしいのですが、今の時代は、会社の一言で企業チームは無くなってしまう。Jクラブも状況は同じでしょうけど、Jクラブ以上にJFLは常に(親会社の撤退に)怯えなければいけない。我々もそこから、今のこういう状況(NPO法人化)になっている。 なので、感慨深いんです。SAGAWAさんに最後、アウェイで勝てた事は(2012年のSAGAWA SHIGA FCのホーム最終戦)、僕らにとって非常に大きな財産になりました。選手達には、何かと言うとSAGAWAさんの名前を出していました。『追いついて追い越そう、何よりも真摯にサッカーをやっている姿は見習わないといけない』と。
-JFLにプロ・アマ混在する中、SAGAWAや横河などの存在がリーグ独自の色を作ってきた。Jを目指すクラブはそこを倒さないと上に行けない。それもリーグの魅力の一つでした。Jを目指さないクラブが全て弱かったら、JFLの価値はもっと下がっていましたよね。
依田 単に『Jリーグに上がる』と宣言したから上がれるか、と言えばそうじゃないですからね。やはり、我々が(その価値を)示さないといけないと思いますよ。
-Jを目指していないクラブが良いサッカーを見せ、『俺達の方が強いんだ』と証明できる場でもありますよね。
依田 サッカーの試合が始まったら、本当にカテゴリーは関係ないんですよ。みんな『目の前の試合を勝ちたい、上手くなりたい』という気持ちがあります。逆にそれが無いとプレー出来ないですし、それ以上を望んでいる選手もいないでしょう。子供達の手本にもならないといけないですし、そこは報酬を超えている部分ですよね。
-そこは報酬を超えている価値があるでしょう、と。
依田 お金(収入)の差は抜きにして「サッカーに向かう姿勢」だとか「人として、という部分」は大切にしたいです。SAGAWAさんには負けていましたけど、それ以外のチームには負けずにやれれば良いなと思っています。それがいつか、このクラブの魅力になると信じたいですね。
<Vol.3に続く>
(了)