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第29回 新たな胎動

東京で生き抜くために

東京を拠点に活動を続けるうえで最大の問題は、人口に対して少なすぎるグラウンド事情の解決だ。先々、ホームスタジアムを確保するには、さらに高いハードルが待ち構える。

「常日頃からグーグルマップとにらめっこです。いまは都内で常時使えるグラウンドがないため、大宮で練習しています。たしかに簡単に解消できる問題ではないのですが、支援してもらうことより、自分たちが地域にできることを提案していくことから先に進めています。それを継続的に取り組むことで、友好な関係を作り、やがてさまざまな協力を受けられるようになると考えていますので」

そう、自分たちの愛するクラブを応援してほしい、支援してほしいと叫ぶのは、輪の外にいる人たちからすれば鬱陶しいだけである。その前に、クラブがその地域にどんな価値を提供できるのか。社会にどう役立つのか。そこから関係性を作っていかなければ、スムーズに事は運ばない。

また、丸山さんはサッカー界の先達を訪ね、積極的に教えを乞うことも忘れない。

「ファジアーノ岡山の木村正明社長には特にお世話になっております。この縁も伊藤忠時代の先輩の紹介です。最初にお会いしたときは、『そんな甘い世界じゃないぞ』と叱り飛ばされ、厳しい言葉をありがたく思うと同時に、ちくしょうという気持ちもありました。それからCRIACAOが少しずつ前進して認めていただき、いくつも貴重なアドバイスをいただいています」

東京都1部リーグは、J1から数えて7部リーグに相当する。日本で最もハイレベルな地域リーグだ。今季の勝算について、どう考えているのか。

「1部に上がるまで途中2年ほど足踏みしたおかげで、チームのベースを固めることができました。東京都1部は上位の実力が拮抗していて簡単にはいかないでしょうが、トップ3にはかなり高い確率で入れると考えています」

こういうことを丸山さんは事もなげに言うのだ。夢や目標ではなく、実現可能なプランとして。私はそれに圧倒されっぱなしである。どうやらこれは今年何度かCRIACAOのサッカーを観に足を運ばなければいけないようだ。

「僕の話を聞いていただくより、選手たちのプレーを見てもらったほうが100倍伝わると思います。グラウンドでお待ちしていますよ」

この日、私が丸山さんに対して感じたことは、主にふたつある。ひとつは、硬直化している日本サッカーに風穴を開けてほしいという期待。もうひとつは、その存在を畏怖する感情だ。脅威だ。ついに、こういう人が出てきたか、と思う。

この先、旧態依然としたやり方に縛られ、それで成果を挙げられないクラブは淘汰されるに違いない。仮に、自分がクラブをスポンサードする側だったとして、行政の関係者だったとして、どちらに将来性を感じるか、どちらと組みたいと考えるか。答えは明らかだ。

CRIACAOの描く未来を、人は荒唐無稽と嗤うだろう。結局、そういう人は何も生み出さないのだから、捨て置いて構わない。丸山さんは前だけを見据え、東京の街を闊歩していく。

(了)

丸山和大さん。この人の顔と名前を覚えておいてほしい。

※今回で「東京サッカーほっつき歩記」はおしまいです。ご愛読、どうもありがとうございました。ご縁があれば、そのときはまたよろしく。

(著者プロフィール)
海江田哲朗(かいえだ・てつろう)
1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディに軸足を置き、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『サッカー批評』『週刊サッカーダイジェスト』『スポーツナビ』など。著書に東京ヴェルディの育成組織を題材にしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)。

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