TOP>>コラム>>column ほっつき歩記>> 第29回 新たな胎動
kaieda

第29回 新たな胎動

「当然ですよね。その言い分はもっともだと思う。自分のせいで、彼らの大学生活をつまらないものにしている。サークルのあるべき姿って、どんなのだろう。ものすごく悩みました」

孤立しかけていた丸山さんを助けたのは、考えに賛同するほかのメンバーだった。最後の年となる3年目、「ここまでやってきたんだから、やり切ろう」と励まされ、立教大学サッカー愛好会はサークルの関東1部リーグで優勝し、東西チャンピオンシップも制覇。目標の日本一を達成した。

「最後のホイッスルが鳴った瞬間、ベンチを見ると、文句を言っていた人たちが泣きながら喜んでいるんですよ。僕も心から熱くなって、ほんとによかったなぁと涙が出た。そのとき、はっきりわかったんです。自分にとって一番大切なことは、サッカーを通じて人の心を揺さぶる、周りに感動を与えることなんだと」

ビジネスを変える人間になる

就職活動を開始した丸山さんは、桐蔭学園の後輩とのやり取りを思い出す。その後輩は能力の高いディフェンダーで、実際にプロからも誘いがあった選手だ。話を断ったと聞いた丸山さんは、「どうして行かなかったの?」と訊ねている。

「マルさん、バカですか? 僕らはプロですぐにクビになる先輩たちをたくさん見てきているじゃないですか。自分の能力ではヘタすると2年、うまくいって5年がせいぜいです。生涯年収を考えてみてくださいよ」

丸山さんは賢い奴だなと感心する一方、寂しくもあった。今後、多くの人材が流入するようにサッカー界を活性化させるためには、不安視されるセカンドキャリアを含めて、クラブの経営面やビジネスを変えていく必要がある。自分はそっち側の人間になろうと思いを定めた。ただし、いまの自分がどこかのJクラブに運よく職を得られたとしても、できることは高が知れている。あらゆる角度から経営を学び、力をつけなければいけないと考えた。

「それに最も適しているのが商社だったんです。原料の仕入れから、マーケティング、流通、販売まで総合的に知ることができ、さまざまな経営者と一緒に仕事ができる。伊藤忠商事では多くのことを学ばせていただきました。やはり、経営者がしっかりしていない企業は伸びないんですよ。経営者がどれほど優秀でも、従業員と意識のかい離が見られる企業は成長につなげれられない。上も下も同じ思いで動けている企業が一番強い」

2013年3月末、7年間勤めた伊藤忠商事を退社。それと前後して、2009年に東京都4部からスタートしたCRIACAOの経営に専念することになった。CRIACAOはポルトガル語で「創造」の意味。「2025年、世界No.1のサッカークラブへ」というビジョンを掲げている。意地悪のつもりはなくても、「ちょっとあんた、正気ですか!?」と問い質してみたくなる。

「9割くらいの方がそういった反応ですね(笑) 僕は自立型のクラブを作りたいんです。応援してくださるスポンサーも大事ですが、どうしても業績に左右されてしまいます。経営を安定させるためには、自分たちで事業を行いながら収益基盤を作ること。そこに雇用も作りだしていく。将来的には、サッカーを軸とした総合商社のようなイメージです」

丸山さんは現在進めている事業の一部を聞かせてくれた。伊藤忠の人脈を駆使したプロテインの販売(高品質の商品を一般のメーカーより安価で提供する)や人材派遣業。ブラインドサッカーとの共同事業。体育会系の学生を対象とする就活セミナーの開催。さらにCRIACAOをともに立ちあげた盟友の剣持雅俊さんと、新宿区スポーツ推進委員協議会の非常勤公務員を務めていること。サッカーに限らず、さまざまなスポーツに触れる場を新宿区の子どもたちに提供していること。いくつかの事業は着実に軌道に乗りつつある。

◆前後のページ | 1 2 | 3