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第25回 でも、応援するんだよ!

93年、大洋ホエールズから横浜ベイスターズにチーム名が変更されたとき、監督に就任した近藤昭仁さんはこう述べている。
「フロントの人間はずっと野球を知らないんです。それが後々の時代まで続く災いの元ですよ。権力だけでなんでも解決しようとするからね。球団の人間もオーナーのお気に入りとか、社長とウマがあうとかそういう事で出世するからゴマ擦りが増える。本当にチームに必要なことを諌言できる人は少なかった」(第四章「マルハと漁師」より)

おいおい、他人事に聞こえないよ。野球とサッカーの違いはあれど、ベイスターズとヴェルディには共通点が多い。本拠地の移転、勃発する身売り騒動、親会社がメディアだったことなど。大きな違いは、かつてヴェルディが栄華を極めた王者だったことだ。

カミソリシュートの異名をとり、70年代から80年代にかけて活躍した200勝投手、平松政次は言う。
「本当に一生懸命頑張った功労者ともいえるベテラン選手が、このチームでは冷遇されている。その処遇を若い現役選手は見ているんです。だからチーム愛というものがなくなってしまうんですよ。(石井)拓朗たちも、(高木)豊や屋敷(要)が出された時を見ていますから。そして、『ああ結局このチームはこういうことなんだ』『チーム愛を持っていてもダメなんだ』という歴史が受け継がれていく。世代が進む度に、選手のチームへの思いもだんだん冷えていく。チームを強くしたい、そう思えるのは、大洋ホエールズ、ベイスターズにね、愛着を感じているかっていう、そういうものが大きいんですからね」(第六章「もののけの末路」より) ※( )の人名は私の補足。

ヴェルディの元関係者は言う。「ベテランの処遇も大事だけど、昨年、キャプテンで10番だった(小林)祐希を外に出してしまったダメージは後々まで響くよ。あいつはジュニアユースからの生え抜きで、周りに与える影響は大きい。あれだけのものを背負わせておきながら、シーズン中にあっさり移籍させるなんて考えられない」。私の考えも同じだ。このマネジメントの失敗が、これから台頭してくるだろうユース出身の選手たちにどのような影響を与えるか。それを思うと、背筋が寒くなる。

結局、行き着くところは

本書が胸に響いたのは、いまの私の心境と深く関係している。今年はヴェルディの試合に入り込めず、ぼーっと見ていることがある。第32節終了時、11位と成績が振るわないことはあまり関係ない。チームの体制が切り替わった初年度だ。すべてうまくいくと考えるほうがどうかしている。苦しいシーズンではあるが、印象深いゲームはすでにいくつかあった。第26節のガンバ大阪戦、雷雨による中断後の劇的な同点ゴール。続く、アビスパ福岡戦、V・ファーレン長崎戦の2試合連続逆転勝利などは、なかなかお目にかかれるものではない。その粘り強さには舌を巻いた。

中位をうろちょろする状況で、観客動員は健闘しているほうである。現在、1試合平均6351人。多くの来場者が見込めるG大阪戦があること以外、さしてプラス要素が見当たらないのに、昨年比で約1000人増は立派だ。最終節を終えて6000人台をキープしていれば、花マルでいい。

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