TOP>>コラム>>column ほっつき歩記>> 第25回 でも、応援するんだよ!
kaieda

第25回 でも、応援するんだよ!

他人事とは思えない

知り合いの編集者から薦められ、村瀬秀信の『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』(双葉社)を読んだ。1998年、38年ぶりのリーグタイトルを獲得し、日本シリーズも制覇しながら、暗黒期に突入した横浜ベイスターズ(旧・大洋ホエールズ/現・横浜DeNAベイスターズ)のノンフィクション。選手や球団スタッフなど、30名以上の関係者の証言を集めた労作だ。

本の帯には〈12球団最多4522敗、5年連続最下位。でも、応援するんだよ!!!〉とある。著者の村瀬さんは生粋のハマっ子で、大のベイスターズファン。ライターであり、ファンである村瀬さんは、両者のあわいを漂いながら、惑い、落胆し、喜び、怒り、奮い立つ。心の震えがビンビン伝わってくるのがとてもいいのだ。野球にはこの手の秀作が多い。たとえば、えのきどいちろうの『F党宣言! 俺たちの北海道日本ハムファイターズ』(河出書房新社)もそのひとつ。ここ日本で長い時間をかけて育まれた、野球というスポーツの懐の深さを感じさせる。

今回は思うところあって、本書と現在の東京ヴェルディを絡めて書いてみたい。

〈「大切なものはね、目には見えないんだよ。目では見えない。心で探さないと」 子どもの頃に読んだ、星の王子様が教えてくれたこと。それは星の球団に誠を誓うものの心得も同様。「勝敗よりも大切なものがある」。94敗、93敗、95敗。うわべの結果だけを見るな、心で探せ。黒星の中から未来を拾い出すのだ。(中略)結局、未来に希望を見出すことでしか、自分がなぜこの万年最下位のチームを執着しているのかの説明がつかないと気が付く。目の前に置かれたものを直視してはその度絶望し、身を捩るほどの悔しさに塗れていたら、今頃は世の中のベイスターズファンはすべて死に絶えている〉(第二章「最下位」より)

わかるなぁ、この感じ。目の前には動かし難い現実があり、それはそれとして受け止める。だが、現実と向き合ってばかりでは身がもたないので、角度や着眼点を変えて見ることを覚えるのだ。若手のちょっとした成長だったり、スタジアムの端っこであった何気ない光景に目を留める。十数年、私はヴェルディを取材してきて、多少強引にでも光明を探し出す術、細部をズームアップする技術は大いに鍛えられた。

〈誰もが負けようと思って、負けているわけじゃない。選手も、監督も、新しい親会社も、フロントも、みんな、どうにかして現状を良くしようともがいた。しかしどんな高尚な理想も、負けはすべてを黒く塗りつぶす〉(第三章「残された者たち」より)

まったく、その通り。これまでのヴェルディの経営陣、チームを率いた監督、選手たち、負けたかった人は誰ひとりとしていない。チームが結果を出し、多くのファンを獲得すれば、お手柄だったのだ。外から見て、ふざけてるとしか思えない人事も、それを決めた本人は大まじめだったりする。とどのつまり、プロの世界は勝つことでしか正しさを証明できない。求心力を高められない。長期的なスパンで物事を捉え、先々の成長につながる土壌づくりを評価してくれる人なんて、ほんの一部だ。目に見える成果を挙げられなければ、すぐさま継続のチャンスを失う。そうして、ある人は志をなくし、ある人は味方の足を引っ張り、ある人は保身に走ることになった。

◆前後のページ | 1 | 2 3