『いしかわごうのウルトラなる挑戦記』 第4回 多摩川クラシコから考える“東京”
例えば先月、香川真司の凱旋試合となった横浜Fマリノスとマンチェスターユナイテッド戦では、赤いユニフォームで日産スタジアムが埋まり、65372人が詰め掛けた。これは、2004年のJリーグ・チャンピオンシップで横浜Fマリノス vs 浦和レッズが動員した64899人を上回り、横浜Fマリノスのクラブ主催試合での歴代最多入場者記録だったそうである。マンチェスターユナイテッドが来るとなれば、スタジアムに足を運ぶサッカーファンが首都圏にこれだけいるというという事だ。
一方、多摩川クラシコの翌週、味の素スタジアムで行われたJリーグのFC東京 vs 横浜Fマリノスは30698人。Jリーグの観客動員において30000人越えは素晴らしい数字なのだが、それでもマンチェスターユナイテッドが来た時の半分である。
女子サッカーの“東京ダービー”が実現したら、どんな付加価値を付けられるだろうか
東京といえば、JリーグにはFC東京と東京ヴェルディによる「東京ダービー」というカードがある。ただ、このダービーは東京ヴェルディのJ2降格に伴い、J1の舞台では2008年を最後に実現していない。それどころか、2011年にはJ2というカテゴリーで実現してしまっている。日本の首都のダービーマッチが2部リーグのカテゴリーで開催されてしまうというのは本来なら一大事件であると思うのだが、それが東京においてどれだけ話題になっていたのか。答えに詰まるというのが正直なところだ。
2002年の日韓ワールドカップの期間中、東京タワーが日本代表カラーである青に点灯して話題になっていたが、「それだったら、東京ダービーで勝ったほうのクラブカラーに東京タワーが点灯してもいいじゃない」ぐらいのテンションがあってもいいではないか。東京のサッカークラブが皆、ビッグクラブになる必要は無いが、東京周辺に存在するサッカーにどうやって足を運んでもらうのか。そこの掘り起こしには、まだ課題が残っている。
もちろん、それは女子サッカークラブ・スフィーダ世田谷FCも向き合っている。首都・東京で今後どんな存在感を出していくのか? 現在、東京の女子サッカークラブのトップにいるのは日テレ・ベレーザであり、スフィーダはその下に位置する“東京のナンバー2”という立ち位置である。現状、“1部昇格争い”という盛り上がる要素がありながらも、8/10ジュブリーレ鹿児島戦の観客数は500人台。まだまだこれからといったところである。
もし今季、スフィーダが1部昇格を果たせば、来季は公式戦でベレーザとの対戦が組まれ、女子サッカーにおける”東京ダービー”の実現となる。ただベレーザであっても、ホームゲームの観客数は1000人台が続いているのが現状だ。仮に東京ダービーという冠をつけたとしても、急に爆発的な動員数になることは期待できないだろう。
だったら、冒頭の多摩川クラシコのように「日本にしか出来ないやり方」を模索するのも一つだし、女子サッカーならではの色付けをしてみるのも面白いかもしれない。例えば、スタジアム観戦に来る女性ファンには、東京ダービーだけはメイクばっちりのオシャレをする「最高の女子力を発揮してスタジアムに来てもらうように呼びかける」とかね。そういうJリーグとはベクトルの違う”東京ダービー”があってもいいのではないだろうか。
ずいぶんと話が逸れてしまったが、来月9月で今季のチャレンジリーグの日程は終了となる。残り4試合のうち、ホームゲームは2試合だけだ。9/1(土)は味の素フィールド西が丘で清水第八プレアデス戦、9/21(日)には駒沢オリンピック公園陸上競技場でのホーム最終戦でASエルフェン狭山FC(現在リーグ2位=昇格圏内)を迎える。特に狭山戦は1部昇格を懸けたクライマックスとなるだろうし、クラブ側も初の有料試合を行うなどかなりの気合いが入っている。
今週末の西が丘での試合は無料観戦なので、まだ観戦した事の無い人は、ひたむきな試合をする彼女達のサッカーを観に、是非一度、試合会場に足を運んでみて欲しい。
(了)
(著者プロフィール)
いしかわ ごう
北海道根室市出身。スカパー!の番組スタッフを経て、サッカーライターに。2013年2月に6シーズンつとめたサッカー専門新聞紙エル・ゴラッソの記者を卒業。現在はサッカーライティングやTV番組の企画構成を中心に活動中。趣味の将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。
ブログは「サッカーのしわざなのだ。」 ツイッターのアカウントは @ishikawago