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第21回 なぜFC東京なのか(前編)

うーむ、これは頼む人間を間違えたかもしれない。客観性を補完するつもりが、主観が強まる一方だ。
どうして私はそのことに気が付かなかったのか。失敗の匂いがプンプンする。
「で、どうなのさ。ヴェルディと見比べて」
「どうなんすかね」
「なんかほら、違いがあるでしょ」
「ガスなんて、別にたいしたことないっすよ」

なんとまあ、実のない会話だこと。そうこうしているうちに試合が始まり、私たちはぼんやりサッカーを見た。二言三言、どうでもいい会話をし、それ以外は押し黙って試合を見ていた。FC東京のゴール裏から発せられるチャントに包まれ、話がはずむわけがない。

「長くやっている選手がいるって、いいですね」
青白い顔をしたノッポが、ぽつりと言った。あぁ、と私は肯く。ピッチには権田修一、徳永悠平、森重真人、ルーカスなど、FC東京のユニフォームがピタッとくる選手が何人もいた。この試合はメンバーから外れていたが、石川直宏のようなクラブを象徴する選手もいる。かたやここ数年の東京Vは選手が毎年のように選手が入れ替わり、在籍期間は飯尾一慶が突出している。

「最初の入口は選手がほとんど。選手のファンは、時間をかけて魅力を伝えればクラブのファンになってくれる」
こう私に教えてくれたのは、2010年まで川崎のゼネラルマネージャーを務めた福家三男さんだ。それがすべてではないが、川崎がJ2であっても毎年着実に入場者数を上積みできた要因のひとつに違いない。最初の入口に日本代表の肩書きは絶大な効果を生むが、東京Vがそれを口にしたら言い訳にしかならない。

後半、私とノッポは大宮側に行き、のんびり観戦することにした。青赤のなかに身を置くのは、予想以上に疲労だったのだ。この日のFC東京のサッカーは低調で、盛り上がりを欠いた。後日、あっちの知り合いに聞くと、大宮戦は特に出来が悪かったらしい。FC東京が0-1で負けたことに安堵し、スタジアムを出た。

たとえば、FC東京でも川崎でもいいから、東京Vから乗り換えた人の意見を聞いてみたいものである。あちこち手広く見ていたなかで、東京Vを選択しなかった人でもいい。話を聞かせてやってもいいよ、という奇特な人がいたら下記まで連絡をもらえると助かります。

tetsu14kaieda@gmail.com(@半角で)

では、後編に続く。
※奇特な人からの募集は締め切りました。ご協力ありがとうございました。(5/12)

(了)

(著者プロフィール)
海江田哲朗(かいえだ・てつろう)
1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディに軸足を置き、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『サッカー批評』『週刊サッカーダイジェスト』『週刊サッカーマガジン』『スポーツナビ』など。著書に東京ヴェルディの育成組織を題材にしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)。

海江田哲朗 東京サッカーほっつき歩記は<毎月第1水曜日>に更新します

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