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第21回 なぜFC東京なのか(前編)

青赤アレルギー発症

4月6日、J1第5節、FC東京と大宮アルディージャの一戦。曇天の下、私とノッポは軽快な足取りで味の素スタジアムの門をくぐった。チケットは近所のセブンイレブンで最も安価なホーム自由席を買い求めた。

バックスタンド側のコンコースをてくてく歩きながら、「やっぱり、人は多いな」と私が言う。「多いですね」とノッポが返す。ふたりとも歩みを進めるにつれ、口数がどんどん少なくなっていった。何か話していないと、息苦しくてたまらない。

「女はブスばっかですよ」
「まるでブスのスクランブル交差点だ」
そんな悪態をつきながら、青赤の波をかき分ける。狂っているのは世界なのか、それとも私たちなのか。

そうして、バックスタンドの一角に腰を落ち着けた。へえと思ったのは、1階のバックスタンド全域がホーム自由席だったことだ。東京Vの場合、バックスタンド中央部はVシートといって割高になる。

ここで両者のチケットの価格を整理しておきたい。東京Vのホーム自由席は前売り2000円、当日2500円。FC東京は前売り2100円、当日2500円。ほぼ同額だ。先述した東京VのVシートは前売り2500円、当日3000円になる。ただし、FC東京は料金設定が2種類あり、上記はカテゴリー1の価格。判明しているところで、7月17日のヴァンフォーレ甲府戦と8月3日の大分トリニータ戦はカテゴリー2にあたり、ホーム自由席は前売り1600円、当日2000円で入れる。

FC東京のほうが割安に感じるのは否めない。一方、東京VのVシートはメインスタンドの両サイドをカバーし、そこは多少お得感がある。FC東京ではS指定席に設定され、カテゴリー1が前売り・当日ともに5000円、カテゴリー2が同4000円となっている。忘れちゃいけないのが、東京VはJ2、FC東京はJ1ということだ。この差を覆すには、パンチが弱いにもほどがある。もっとも、こんなこと東京Vサイドは百も承知で、価格を下げたところで集客に影響がなく、かえって収入が減るという計算だ。残念ながら、その通りなのだろう。

実際、チケットの価格をつぶさに見比べる人がどの程度いるかわからないが、ほぼ同じ価格でどうせ見るならJ1の試合と考えるのが自然に思える。比較対象とは違うけれども、これとは別件で松本山雅FCのホーム自由席を買い求めたら、前売りがたったの1200円で驚いた。松本が新興クラブとしてファンの裾野を広げることに主眼を置き、また安価に抑えることで集客につなげられる自信が窺える。事実、その試みは結果として表れている。今季の松本の1試合平均入場者数は1万人を超え(第11節終了時)、J2ではガンバ大阪に次ぐ2位だ。

ふと横を見ると、ノッポの顔色が悪い。へらへら笑ってはいるが、表情が妙に強張っている。試合が始まるのを待たずして、早くも青赤アレルギー発症か。スタジアムに入る前、「ベロのところ(ゴール裏の中心部)まで行っちゃいますか!」と言っていた威勢の良さはどこにいった?

ノッポの視線の先には、アップ中の河野広貴がいた。
「何やってんすかね、あいつ」
ベンチをあたためることの多い河野にチクリと嫌味を言ったつもりだろうが、
何やってんのって言われるのは、こっちのほうだよ!

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