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第17回 在日コリアン・サッカー(前編)

待ち合わせの場所は、文京区白山の朝鮮出版会館。清敬さんは、ここの「コリアブックセンター」(南北朝鮮関係の書籍専門店)に勤務している。正面玄関のドアを開けると、受付のおじさんはこちらをギロッとひと睨み。さすがは朝鮮総連傘下の組織がぎっしり入るビルである。ウェルカムな雰囲気ではない。来訪の理由を告げ、堅い革張りのソファーで待った。それにしても冷え冷えとしたロビーだ。空調が効いておらず、照明も暗い。また、いまどきテーブルに灰皿が置かれ、自由に煙草が吸えるロビーなんてほかにはない。

やがて、ジャージ姿の清敬さんが現れ、挨拶もそこそこに話を始めた。

「日本の多くの人たちは、われわれのことを案外知らないですよね。練習試合では『いつ日本に来たんですか?』と聞かれたり、『あいつら、日本語しゃべってるよ』と驚かれたりする。私たちは日本で生まれ、ここで死んでいくんです。サッカーは好きでやっているだけで、(朝鮮総連の)組織とは関係ない。サッカーを通じて交流し、理解者を増やしていくのが大切だと思っています」

東京都リーグ時代、警視庁サッカー部との試合で起こった緊迫のエピソードが傑作である。激しい接触プレーを巡って数人が揉み合いとなり、警視庁の選手が「おまえら、強制送還するぞッ」と言い放った。いくらなんでもその言い草はあんまりだろうとFCコリア側は厳重抗議。すまん言いすぎたと警視庁側が詫びを入れ、一件落着したそうだ。こういった揉めごとは笑い話で済むように、さっさと火消ししておくに限る。

「昨年は全社で優勝し、とてもいい経験をさせてもらいました。選手の自信にもなったでしょう。 黄永宗(ファン・ヨンジョン)が監督になって最初の年ですから、全部がうまくいくはずはない。リーグ戦の前半はなかなか結果が出ませんでしたが、後半になって目指すサッカーが形になってきた。今年はもっと楽しみですよ」

清敬さんはFCコリアの可能性をこう語る。

「昔は盛んだった(北朝鮮との)民間レベルの交流ができなくなっているのが残念ですね。拉致問題以降、完全に途絶えています。スポーツに政治を持ち込んではいけない。だが、現実は政治を抜きにスポーツを語れません。今後、北や南への遠征を実現させたい。そのためには、もっと力をつけなければ」

<後編に続く>

(了)

(著者プロフィール)
海江田哲朗(かいえだ・てつろう)
1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディに軸足を置き、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『サッカー批評』『週刊サッカーダイジェスト』『週刊サッカーマガジン』『スポーツナビ』など。著書に東京ヴェルディの育成組織を題材にしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)。

海江田哲朗 東京サッカーほっつき歩記は<毎月第1水曜日>に更新します

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