#12 日テレ・ベレーザ2012シーズン回顧(前編)
主力の怪我が与えた大きな影響とは
主力がピッチに立てなくなっても、現有戦力で補完することができた。だが、それによって層の薄さという問題に直面する。特に小林弥生をベンチに置いておけないことは、試合展開を難しくした。先述の通り、彼女の存在感はリーグ後半戦に入って更に際立つことになった。1.5列目に入り、中盤に下がってパスを受けては的確に味方を使う。永里がポストプレーに入れば小林弥は裏へ走るなど、周囲がやってほしいと思うことをピッチで実践し続けた。
彼女を前線に置いたシステムが機能したことも、カップ戦制覇の大きな要因だった。ただ、野田監督はひとつの懸念を抱いていた。 「本当は、これまでも切り札として持っておきたかった。でも苦しい台所事情の中、スタートから行かざるを得なかったのがカップ戦あたりだった」
スタートから出場しても、もちろん輝きを放つことはできる。しかし、途中投入で試合の流れをコントロールできるのは、小林弥しかいない。劣勢の時はその状況を好転させ、優勢なら勢いを更に加速させる。経験のある選手がベンチに控えていることは、チームにとって心強いものだ。
「試合の流れを把握した上で途中から出てくれると、流れを一気に変えてくれる。元々そういう使い方をしたかったのが本心。年齢的なことや怪我の負担を考えた時に、試合の半分くらいで一気にやってくれた方が、パフォーマンス的にも期待したものを出してくれる」
指揮官の、小林弥生への信頼は厚い。
「(10/21)岡山湯郷Belle戦の時も『状況判断はすべて任せるから』と言って、後半アタマから送り出した。指示はそれだけ。指示がそれだけで良いのは自分としても理想的だし、その通りに動いてくれて、ゴールも決めてくれた」
選手層の薄さは、試合運びに大きな影響を及ぼす。だが、それは当初から分かっていたことでもあった。だからこそ野田監督は「全員が戦力」と言い続け、チーム全体の奮起を促した。練習からベテランが引っ張り、若い選手達は必死に食らいついてきた。それが結果という形に表れたのが、9/9(日)なでしこリーグカップ(INAC神戸レオネッサ戦)での優勝だった。
野田監督体制となって初のタイトル獲得。チームは、そこから更なる強化を図ることになる。
(了) ~後編に続く~