#1 2012年の東京サッカーシーンをISSUEする
全社優勝を果たした東京23FCの2011シーズン総決算
アマラオ監督を招聘し、2011年の東京都社会人サッカーリーグ1部を無敗で優勝、リーグ2連覇した東京23フットボールクラブ。10月の全国社会人サッカー選手権に関東代表として出場し、周囲の期待や予想を上回る“全社優勝”という結果を残し、JFL昇格への登竜門・全国地域サッカーリーグ決勝大会への出場も決めた。しかし2011年の照準は、関東2部昇格を賭けた11月の関東社会人サッカー大会である事を、シーズン前からクラブ関係者は口にしていた。
もちろん12月の地域決勝での“3階級アップ”も期待されたが、クラブとしての現実的な目標は関東2部に昇格する事だ。2010年の関東社会人1回戦では、神奈川県のS.C.相模原(現・関東1部所属)に大敗している。関東2部昇格への強い思いは、リーグ終盤の頃になるとクラブ関係者の表情からも伺い知れた。
しかし、関東社会人2回戦で千葉県の浦安JSCに敗れ、関東2部昇格を逃してしまう。そして12月の地域決勝も1次ラウンドで敗退し、この時点では2012年も都リーグ1部残留となってしまった。3月の震災の影響で、試合スケジュール変更や練習場確保の問題など苦労していたが、1年を通してアマラオ監督率いる若いチームは着実に成長し、都リーグでは他を圧倒する実力を見せつけた。そして全社の関東予選や本大会を通して、格上とされる4部・5部リーグで戦うに相応しいチームへと進化していった。にも関わらず、あと一歩のところで望みを絶たれるのだからフットボールは何が起こるか分からない。
一時は可能性が閉ざされた扉ではあったが、地域決勝で優勝したY.S.C.C(関東1部所属)がJFL昇格を決め、チーム数補填の為に関東2部・3位だったクラブ・ドラゴンズが1部昇格となり、先の関東社会人2回戦で敗退した4チームによる“敗者復活戦”が行われる事になった。1月14~15日の2日間、市原臨海競技場で行われる『関東サッカーリーグ昇格決定戦』で優勝すれば、2012年の関東2部昇格が決まる。アマラオが率いた東京23FCにとって、この試合が2011シーズンの総決算であり、最後に巡ってきたチャンスとなる。
既にクラブは12月末をもってアマラオ監督の退任を発表していたが、1月9日に練習試合を兼ねたセレクションを開催するとの事で、新年の挨拶も兼ね練習グラウンドを訪れてみた。選手・チームマネージャー・コーチ・強化担当者が揃い、いつもと変らぬ明るい雰囲気で練習は始まり、翌週に控える大一番への気負いは見られない。クラブ関係者は「アマラオが去った今、誰が監督だとか言っている時ではなく、2011年を一緒に戦ったメンバー全員が一つになってやるのみです」と笑顔で話す。
「関東社会人や地域決勝の敗退は、色々な人達の期待を裏切ってしまい申し訳なかった」と言いながらも、悲壮感や暗いムードは漂っていない。また、強化担当者は「自分達で言うのはおかしい事かもしれないが、関東リーグで戦う力は充分に持っているチームだと思う。ただ、今にして思えば、11月の大会の時は心のどこかに“昇格は大丈夫だろう”という甘さがあったかな。絶対にこの試合で昇格を決める、という強い気持ちは浦安JSCが上だった」と話す。「周囲から期待されていない、プレッシャーのかかっていない全社で優勝して、肝心な試合を落としてしまった。これは我々を含めた全員のメンタルの問題だと思う」と、冷静に分析していた。
クラブは今年からセカンドチームを発足させ、都リーグ4部から参戦することを発表している。トップチームで退団する選手は今のところ1名のみと聞いた。セレクションや練習試合を見つめる強化担当者は「(競争の意味も込めて)トップとセカンドで何人かの選手の入れ替えはあると思うけれど、それでもこのクラブに残りたいと思う選手が何人いるか。東京23FCでサッカーをしたい、このクラブで上を目指したい、という選手を育てていかなければクラブの未来も作っていけないでしょう」と語った。
新しい監督やチーム編成は1月末のクラブ報告会で発表となる。その報告会が“関東2部昇格を祝う会”にもなるのか。クラブの命運をかけた試合がいよいよ今週末に迫っている。
(了)
(取材・文 KITASAWA GOTA)