#23 3/17 J1 第2節 FC東京 vs 名古屋グランパス
中盤のタメから生まれたスパーク
ハーフタイムには「いろいろ言われました。大宮戦はサブだったからアップしてたので知らなかったんですが、他の選手に聞くと今回も……(苦笑)」(MF石川直宏)とあったように、相当なゲキが飛んだようだ。それで火がついたのか、FC東京は大宮戦と同じように別のチームへと変貌する。
前半は低い位置でもらうことが多かったMF梶山陽平とMF長谷川アーリアジャスールが、相手陣地でのキープとタメを実行できるようになる。すると後半14分、DF太田宏介のオーバーラップを促し、太田のパスを受けた羽生のシュートのこぼれ球を、フリーになった石川が左足を振りぬき同点に追いついた。
こうなると、オフェンスが一気にスパークするのが今季のFC東京のようだ。足が止まった名古屋守備陣を左右、そして縦の奥行きで揺さぶりをかける。22分、ペナルティーエリア手前右寄りでフリーになった高橋が落ち着いた所作でファーサイドへクロスを送ると、フリーになったDF加賀健一がヘッドで中央に折り返す。そこに待っていたのは長谷川。「得意じゃない」頭でゴールに流し込み、逆転を果たす。
湧き上がるスタジアムに乗せられて6分後、激しい中盤のプレスによるFWルーカスのカットから梶山に渡り、梶山の斜め前方のスルーパスに抜け出した石川がダメ押し点をゲットする。「よくない時っていうのは、トラップで考えて、シュートでも考えちゃうんですけど、あの形でいえば一連の流れでシュートまで持っていけた」とは石川。勢いに乗ったチームは14分間で3得点を奪う。ストイコビッチ監督は「2、3点目はこちら側のミステークだった」と悔やんだが、跳ね返す力に関してはJリーグ随一の名古屋守備陣を破綻させた点については、大いに評価できるところだ。
43分、セットプレーの流れから永井にゴールを許して1点差に詰められたものの、3-2でタイムアップの笛を聞いた。
「5ゴールも入って、見ているお客さんにとってはアメージングな内容になっただろう」(ストイコビッチ監督)
「足を運んでくれたサポーターに感謝したいのと同時に、今日テレビ観戦した人々にはぜひ、こういう試合を見逃さないでほしい」(ポポヴィッチ監督)
と、両指揮官が語る通り、オープンな展開とファイトする姿勢(それが高じすぎた結果、後半アディショナルタイムの小競り合いも生まれたが)が前後半で激しく揺れ動いた好ゲームは、エンターテイメント性としてはハイレベルなものだったことは確かだ。またFC東京としては、後半アディショナルタイムからは左ひざ前十字靭帯を痛めていたMF米本拓司が328日ぶりに公式戦のピッチに立つなど、勝ち点3以外にもポジティブな要素は多い。
だからこそ、ネガティブだった前半の停滞を、チームがいかにして改善していくのかが興味深い。しかし次戦は中2日でのACL・蔚山現代戦。戦術的な修正時間はないと言っていい。ひとまずは公式戦3連勝の勢いをもって、Kリーグカップチャンピオンにぶつかる方が得策なのかもしれない。
(了)
(取材・文 佐藤匠司)