第28回 ヴェルディのある生活
ヴェルディがある生活
『サッカーJ+』(エンターブレイン)という雑誌があったのをご記憶だろうか。発売は、2005年8月から2007年9月まで。季刊のサッカー専門誌、とりわけJリーグに特化した媒体として刊行された。2007年6月のvol.8から月刊化し、vol.11で終止符を打った。
ちょっと考えられないような無茶をする雑誌だった。創刊号は全国版に加え、J1、J2の30クラブ(当時)それぞれの表紙と独自記事を掲載する31バージョンを用意。各ホームタウン地域の書店にピンポイントで配本した。コスト度外視。心意気だけだ。関係者は、Jリーグを盛り上げたいの一点張りだった。率直に、バッカだねえと思ったが、そのバカっぷりたるやあっぱれである。「面白そうだから、おれも一枚噛ませて」と言わざるをえないバカパワーがあった。
2005年8月の創刊号、東京ヴェルディを担当する私は、特集ページのほか小さな囲み記事を書いている。
【ヴェルディサポ御用達 本格フットボールカフェの誕生】
立川駅から徒歩2分という抜群のロケーションにオープンしたCafe do CRAQUE(カフェ・ド・クラッキ)。店内は歴代のユニフォームやタオルマフラーが飾られ、ヴェルディのサポーターにとっては楽園のような店だ。
「最初は完全に他人事でしたよ。ヴェルディの試合が終わったあと、みんなで集まれる店があったらいいのになぁ、と。フォルサ立川(市の商店などを中心に発足した応援団体)の人たちと交流を重ねるうちに、自分がやることになっていた」と笑うのはオーナーの飯塚恭太さん。
昨年の秋から本格的な準備をスタート。開店資金を集め、途中、確保できたはずのテナントにフラれるなどのピンチに見舞われながら、なんとか今年6月15日のオープンに漕ぎ着けた。ラストスパートは連日徹夜の日々だったそうである。
「日常の中にサッカーとヴェルディがある生活。それを手助けできる存在でありたい。まずはこの店を成功させて、ほかの地域にも広げていきたいですね」
店名はOBの北沢豪さんが名付け親。クラッキは名手・天才の意味だ。ヴェルディの試合は可能な限りライブで放送する。ただし、ホームゲームの際は、店員総出でスタジアムへ。ご注意あれ。
(『サッカーJ+』vol.1より)
そのクラッキが、年内をもって閉店することになった。オーナーからそのことを聞かされたのは、今年の夏だ。さみしくなるなぁ、以外に感想が浮かばない。「じゃあ、最後はパーッとやりましょうか!」と、努めて明るく話した。