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『いしかわごうのウルトラなる挑戦記』 第5回 39分の秘密

ノジマステラ神奈川vsスフィーダ世田谷FCの再開試合は9月18日(水)の夜8時から。

その日の午前中、ちょうど川崎フロンターレがトレーニングをしているので、麻生グラウンドに取材しに行く予定があった。せっかくだから、何かアドバイスをもらえないだろうかと、再開試合を経験している中村憲剛選手に「かくかくしかじかで、今日の夜に再開試合を行う女子チームがあるのだけど・・・・」と水を向けてみると、自身の記憶をたぐりよせながら、あの「16分の秘密」を懐かしそうに教えてくれた。

「まず、ウォーミングアップを全力でやったほうがいいね。自分たちは普段のアップと同じようにやって試合に臨んでいたけど、アントラーズのほうは全力でアップをやっていたから」

ほうほうほう。

コンディションの作り方の反省点を述べていた。普段の90分がマラソンだとしたら、再開試合は短距離走のようなものか。いきなりアクセル全開にしておく必要があるわけだ。そう言われてみたら、確かにあの試合の両チームの身体の動きには差があったかもしれない。

「あとはファーストプレーだよね。いきなり岩政に決められたから(笑) あの時は、テセがさぼったのかどうかしらないけど、マークを振り切られてしまった。『そんなことあるの?』って展開で失点して、あれで完全に浮き足立ってしまった。こんなに釘付けになる?っていうぐらい釘付けになった。ああなると、もう『相手をいなす』とかじゃなかったね」

なるほど、なるほど。奇しくも、スフィーダも2点リードしている状況は同じだ。サッカーで2点差は危険な点数と言われているだけに、いきなりの失点は避けたいところだ。ゲームの入り方はポイントと言えそうだ。最後に、違いにも触れてくれていた。

「何分やるの? 39分もあるの? あの時は16分だったからなぁ・・・それだったら自分たちの時とは、ちょっと違うかも。じゃあ、『頑張ってください』と伝えておいて。何時からやるの? 夜8時? 気になるから、試合結果はチェックしておくよ」

そうエールまで送ってくれた上に、試合結果まで気にかけてくれると言って練習場から帰って行った。相変わらず、いい人である。

そして夜、相模原線の相武台下駅で降り、真っ暗な道を通り抜けてノジマフットボールパークに到着。平日のナイトゲーム、それも日程が決まったのは、前日のことなのだ。それでもすでに駆けつけたサポーターは少なくはなく、試合開始15分ぐらい前になると、ピッチ横に設置されている客席がほぼ埋まるぐらいにはなっていた。ウォーミングアップ中には、スフィーダサポーターからの「オンナよりも〜仕事よりも〜世田谷〜」の、実にマッチングしたチャントが響いていた(密かにDF永田真耶がウケていたらしい)。まぁ、「オンナよりも〜」と言っても、彼らが観にきているのは女子サッカーなのですが。

アップ中の両チームの雰囲気もなかなか対照的で、黙々とアップし、どことなく緊張感が漂うスフィーダの選手達の反対側では、鬼ごっこ形式のアップで、笑い声を響かせながらリラックスするノジマの選手達という構図だった。なおDF臼井理恵が仕事の都合で試合に間に合わなかった為、急遽、DF岡田あやめが出場することになっていた。プロ契約ではなく、平日は仕事をしながらサッカーを続けている彼女達の難しいところだ。

試合はスフィーダが2点目を取った時点で中断となった為、フリーキックではなく、ノジマのキックオフからの再開となった。詳細はマッチレポートに掲載されているので割愛するが、試合は後半23分、MF薄田春果のゴールで勝利を決定づけ、3−0の勝利して入れ替え戦出場の切符を掴んだ。めでたし、めでたしである。

鹿島vs川崎のようなジェットコースターの展開になることもなく、スフィーダが危なげなく勝ったわけだったが、再開試合らしい光景といえば、やはりキックアンドラッシュが多かったことだろうか。ボールホルダーは前線にロングボールを蹴り込み、守備側は猛烈なハイプレスをかけにいき、さらにお互いが全力疾走してそのルーズボールを奪い合うという展開が、立ち上がりから15分ほど続いた。

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