『いしかわごうのウルトラなる挑戦記』 第2回 侵入者を弾き返せ
MF冨山の駆け引きが生んだ決勝点
繰り返しになるが、この日のピッチはかなり悪かった。だから地上戦ではなく空中戦でサッカーを組み立てている。それはセオリーとして正しい選択だ。しかし、時にはその足場の悪い地上を逆手に取った工夫をしてみる。そして、その工夫が試合を動かした。「その手があったか!」と思わず下條が膝をポンと叩いたかどうかは分からないが(たぶん叩いてない)、頭脳派・冨山の駆け引きの上手さが生んだ1点だったとも言えるかもしれない。
貴重な先制点を奪ったが、そこからの試合運びも特筆すべきものがあった。残り時間は20分ほどだったが、アディショナルタイムに危険な位置でFKを与えて肝を冷やした以外は、スフィーダはほぼ完璧とも言えるゲームコントロールを見せている。リーグ随一の得点力を誇るチームが、1-0でしっかりゲームを終わらせる事を出来るようになっているのは、チームとしての成長だろう。
「監督からも『試合を終わらせる事をしっかりやれ』と言われていました。簡単に跳ね返す守備を徹底できていたと思います」 無失点の立役者となったセンターバックの臼井も、そう言って胸を張った。エリア内の侵入者や危険な攻撃を、ことごとく弾き返した彼女の姿は、実に逞しかった。
そして、それはチームの成長でもある。指揮官も手応えを感じているようだった。 「今日みたいな厳しいゲームでも勝ち切れるようになってきたころが一番評価出来る事なのかと思います。以前であれば、こういう試合を落としてしまっていた。そこは成長したところだと思います」(川邊監督)
そして1部リーグ昇格への挑戦はまだまだ続く
こうしてホーム・大蔵での初開催の試合は勝利で飾ることができた。この日、集まった観客数は516人。目標としていた1000人越えには遠かったのは残念だが、この日の天候を考えたら仕方がない部分もある。試合後、川邊監督にそのへんを聞いてみた。
「僕の予定では、あっち(芝生席)まで全部埋まるはずだったのですけどね(笑) ココは屋根が無いですから、雨が降ると観客の入りが半分以下になってしまいますから。砧・大蔵地域にもポスティングするなどして広報活動をしていたのですが、『雨だったら、試合は中止でしょ?』ぐらいに思われていたのかもしれない(笑) 選手達の知り合いにも、朝からキャンセルの連絡が相次いでいたみたいなので。それでも、その中でもこれだけのお客さんが来てくれて良かったです。(スタンドが)狭いのでお客さんがいっぱい入っている感じもありました」
競技場内ではグッズなどの物品販売ができなかったりと、スフィーダ世田谷FCがココを拠点としていく為の課題はまだまだ山積みだ。ただ、自分たちの家は少しずつ作り上げていくものでもある。そこは、これから一歩ずつ解決していくしかないだろう。
次回の大蔵総合運動場での開催は、7/20(土)JFAアカデミー福島戦となる。
(了)
(著者プロフィール)
いしかわ ごう
北海道根室市出身。スカパー!の番組スタッフを経て、サッカーライターに。2013年2月に6シーズンつとめたサッカー専門新聞紙エル・ゴラッソの記者を卒業。現在はサッカーライティングやTV番組の企画構成を中心に活動中。趣味の将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。
ブログは「サッカーのしわざなのだ。」 ツイッターのアカウントは @ishikawago