連載コラム開始 『町田でお待ちだ!』 第1回 町田はJに戻れるのか?
秋田監督のトレーニングの特徴は?
「夏頃からぐぐーっと上がってくる」。秋田豊監督は開幕前からチームの伸びを“予言”していた。その理由はタフなトレーニングを積み上げた”貯金”だ。秋田監督は「もっとやりたい」と口にするが、前任のアルディレス監督に比べてトレーニングの強度は大きく増した。特にフィジカル系のメニューは豊富で、秋田監督がこだわっている部分だ。ベンチプレス、スクワットといった一般的なメニューはもちろん、体幹、ステップワークと言った身体の“切れ”を出すメニューも多い。更に戦術・技術系のメニューにもフィジカルの要素がうまく入れ込まれている。
フィジカルの強化は結果が出るのに時間がかかるし、ハードメニューは短期的に身体の消耗を招く。町田も始動直後には、負傷者・別メニュー組の方が多いような時期もあった。もしかすると“練習させ過ぎ”な部分はあるのかもしれないが、単なる調整では根本的な強化はできず、負荷をかけなければプラスαは生まれない。
2部練習も含めた“練習漬け”を許すのが、プロフェッショナルな環境だ。「他のチームは何か仕事をしながらやっている。しかし町田は24時間、サッカーのことを考えながら準備できる。そうしたら練習量も増やして、質も上げなきゃいけない」と秋田監督は意気込む。町田にはサッカーに専念できる環境があり、選手にはそれを生かす責任もある。パワー、ハードワークは町田の強みとして浮かび上がりつつあり、琉球戦の後半も完全に走力で圧倒する展開だった。
ベテランの多いチームだと、ハードトレーニングがマイナスになることもある。またキャリアが長くて“こだわり”が強いタイプは、秋田監督のように要求が強い指導者と衝突を起こしやすい。しかし今季の町田は若く、直近(第11節・琉球戦)のスタメンを見ると、三鬼海、平智広、ユデヒョン、庄司悦大、鈴木孝司、真野亮二の6名が23歳以下。未熟さを残しつつも素直な“平成組”が、秋田流を徐々に吸収しつつある。
庄司は昨年、期待を受けて入団したボランチだが持ち味を出せず、今季も第3節まで出場機会を与えられなかった。しかし足をこまめに動かし、球際でファイトするという“泥臭さ”を身に着け、その後の浮上に大きく貢献した。若手を“育てて勝つ”のが、秋田ゼルビアの本領だ。ゼルビアは徐々に浮上しつつある。今なら「町田はJに戻れるのか?」と聞かれても、もう困った顔はしない。
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(著者プロフィール)
大島和人(おおしま・かずと) 1976年生まれ。“球技ライター”の肩書で、さまざまなボールゲームを取材(見物?)している。主な寄稿先に『エルゴラッソ』『サッカーマガジン』など。12年にはJ’s GOALのFC町田ゼルビア担当としてJ2初年度の戦いを追い、併せて町田市に転居。今年も引き続き地元クラブの取材を続けている。