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#8 最優秀育成クラブが求めるもの

東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第8回は2011年Jリーグ最優秀育成クラブとして表彰されたユースチームのオハナシです。

最優秀育成クラブが求めるもの ~トップチーム昇格はゴールにあらず、その先を見据えた育成を~

高円宮杯サッカーリーグ・プレミアリーグEASTで首位を独走中の東京ヴェルディユース。リーグ前半を折り返し7勝2分といまだ負けがない。伝統である個々の高い技術とパスワークは今年も健在で、加えて“トップチームで通用する”という明確な基準も、他を圧倒する一因となっている。トップチームのJ2・東京ヴェルディは昨年、Jリーグから最優秀育成クラブという名誉ある賞を受けた。しかし、クラブはそれに胡座をかくことなく、更なる発展に着手している。

トップチームのためのユース

今シーズンから東京Vユースの監督は代わっている。昨年までトップチームのコーチを務めていた冨樫剛一氏が指揮することになった。トップチームからは、選手を送り出すだけでなく、試合に絡み、百戦錬磨のJリーガーに混じっても遜色なくプレーできる人材の育成が求められている。

昨年のプレミアリーグEAST優勝を逃し、改革に乗り出した東京Vユースは、先述の通りリーグ戦で首位をひた走る。ただ、彼らの最終目的はユース年代の王者になることではない。もちろんプレミアリーグ覇権奪取は至上命題ではあるが、その先のトップチーム昇格、そしてJの試合に出場し活躍することが、本来の目的だ。

その点、冨樫監督にも全くブレはない。今年2月に話を聞いた時、「トップチームのためにユースがある。選手達にも、上のレベルでプレーできるかという基準で話している」と語っており、それは今でも変わっていない。

選手達も監督の意思を共有している。今シーズンの10番で、チームの核となるMF中島翔哉は、今年から通信制高校に編入した。午前中はトップチームの練習に参加し、夕方からユースの練習で汗を流す日々を送っている。日常的に高いレベルに接することで、学んだことがあるという。

「守備は今まであまり考えていませんでした。でも、トップチームの選手はしっかりやっているし、バルセロナのイニエスタやシャビも守備をしていますから」

卓越した攻撃センスを備えるが故に、守備を疎かにしてしまう。こういった例は枚挙にいとまがないが、中島はトップチームと練習をすることで課題を見つけ、それを改善しながら成長を図っている。ユースの試合ではそれほど守勢に回ることがないが、それでも、攻撃から守備に移った時の切り替えは速くなっている。

4月に行われたプレミアリーグ第3節・清水エスパルスユース戦。ヴェルディユースは中島のゴールなどで5-0の圧勝で終えた。だが試合後、冨樫監督は清水ユース側の事情を引き合いに出し、こう話した。 「むこうは石毛(秀樹)君がトップチーム優先のため、今日はいませんでした。トップチームの為のユースという部分で考えると、正しいのはエスパルスなのかもしれない」

冨樫監督にしてみれば、下部組織としての役割を果たしているのはエスパルスの方だったという事だ。トップで通用する選手を育成していく以上、ヴェルディユースにも石毛選手のような存在が出てこなければならない。

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