#2 『東京クラシック』 あるDFの悔恨と矜持
東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第2回は『東京クラシック』 4/1(日)の町田vs東京Vに出場した選手のオハナシです。
深津 「みんなには、お世話になってきた」
「ゼルビアのみんなには、お世話になってきた。だからこそ、勝ってやりたいという気持ちが強かったですね。」
Jリーグの舞台で初となる『東京クラシック』。特別な気持ちで戦いを迎えた選手が、東京Vにいた。
DF深津康太である。
03年に名古屋に入団したセンターバックは、様々なチームを渡り歩いて09年に町田ゼルビアに加入し、JFLで過ごした2シーズンで58試合に出場。センターバックながら3得点を挙げるなど、町田で実績を作って昨季から東京Vへ移籍。今季、東京Vから町田に期限付き移籍したFW平本一樹と同じく、『東京クラシック』の2チームを知る貴重な存在だ。
ただ、Jリーグの舞台に上がった状況からスタートした平本と比べると、深津は少し違う境遇なのである。
「(09年に)FC岐阜からゼルビアに移籍したのは、Jを目指していたからと、(戸塚)哲也さんがいたからでした。でも、1年目はアマ契約だったんですよ。今日の試合のスポンサードになっていた、『イーグル建創』さんの太陽光エネルギーの営業をやりながらです。」
試合後、日没を迎えて冷えた状況。その中でも、深津は続けた。
「1年間、休みはなかったですね。仕事と練習の時間ですか?例えば火曜日は9時から18時まで仕事をして、20時から練習をする。翌水曜日は9時から12時まで仕事をして、午後から練習をするといった感じです。ただ、そんな仕事をしつつもプレーできるっていうことが、同じ住まいで過ごしたこともある彼ら(ゼルビアの選手)と戦えたことは嬉しかったです。」
さて、深津が特別な思いで臨んだ『東京クラシック』、90分を俯瞰的に振り返る。
前半、「試合開始時間を“17時”と間違えていたんじゃないか(この試合は16時キックオフ)?と思うほど寝ている選手が半分くらいいた。」と川勝良一監督が試合後の会見でおかんむりだったように、東京Vの出足は鈍く、町田に支配される時間帯が続いた。左サイドからの攻撃を仕掛けるため、MF西紀寛が流れてくるなどの工夫を見せるが、フィニッシュまでの局面に至らない。
前半、東京Vのシュートは2本のみ。野田祐樹主審の笛が鳴ると同時に、東京Vのゴール裏からはブーイング、そして「シュート打て!シュート打て!」の怒号が響いた。
しかし、後半に入ると流れが一変する。開始と同時に投入したFW杉本健勇(C大阪から期限付き移籍)が躍動する。「デビュー戦という意識はなかった」と語る通り、強さと高さ、そして足元の柔らかさを兼備したプレーで圧倒。後半1分、杉本が頭で競り合ったボールを阿部が裏に抜け出し、豪快なボレーシュートで先制点を挙げ、いきなりのアシスト。一度は同点に追いつかれたが、32分にはMF西紀寛の左CKを高い打点で合わせて、決勝点をもぎとった。「決めた瞬間、自然と走っていた。応援、声援が暖かいです。」と殊勝なコメントを残した背番号41が、“表の”ヒーローであったことは周知だろう。