第27回 さらば、国立
いまこそスポーツ博物館へ
金色の紙吹雪が舞う壇上で、チャンピオンカップを高々と掲げたのは柏レイソルだった。11月2日(土)のナビスコカップ決勝、1‐0で浦和レッズを下し、14年ぶり2度目の栄冠を手にした。MVPに選出されたのは、決勝点を挙げた工藤壮人。ゴールにつながった藤田優人のクロスも見事だった。
ここ国立競技場では、最後のナビスコカップ・ファイナルとなる。来年の夏から大改修に入り、完成予定は2019年3月。同年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピックのメインスタジアムとなる予定だ。
国立競技場には、秩父宮スポーツ博物館・図書館がある。図書館には昔よくお世話になった。調べものをするとき、過去の雑誌なら大宅壮一文庫、なかでもスポーツ関係はスポーツ図書館を頼った。国会図書館に行くより、お手軽で利便性が高かったのだ。一方、スポーツ博物館には足を運んだことがなかった。いつか寄ってみようと思いながら、今日まで来てしまった。身近にあると、案外そういう事態になるのである。東京在住で東京タワーに登ったことのない人はたくさんいる。そういえば、私はスカイツリーに登ったことがなく、今後も何か特別な理由がない限り行かないままだろう。
ナビスコカップの決勝当日、ちょうどいい機会だとスポーツ博物館を訪ねるつもりだった。ところが、取材が長引き、開館時間に間に合わず(16時半閉館。入場は16時まで)。またチャンスがあったら、の心づもりでは永遠に行けないかもしれない。スケジュール帳を確認すると、4日後の水曜日なら行けそうだ。よし、この日にしようと再訪を決めた。
試合のない日に千駄ヶ谷の駅で降りることはめったにない。国立競技場内に事務所を構える東京都サッカー協会に用があったときくらいのものだ。ヘンな気分だなぁと周囲をきょろきょろしつつ、聖地国立を目指した。
スポーツ博物館では、特別展「SAYONARA国立競技場」を開催中である。受付で300円(高校生以下は100円)を支払うと、首から下げる入館証を渡された。えっ、これなんすか?
「そこの階段を上って、競技場に入ってください。26番ゲートね。観客席から見学できます」
知らなかったよ。そういうサービスがあるんだ。指示に従い、26番ゲートをくぐった。がらんとした国立競技場。夕陽を浴び、オレンジ色に染まっている。座席に腰掛け、思い出されたのは東京ダービーで勝利した那須大亮(現・浦和レッズ)のヘディングシュート(08年8月23日J1第22節 FC東京1‐2東京V)と、凄惨を極めた7連敗(07年5月3日J2第13節 東京V1‐5水戸)だった。
私のほかに、見学者が十数人いた。思ったより多い。平日のわりに賑わっているほうだ。係員の人に聞けば、「取り壊されるニュースが報じられるにつれ、来場者がどんどん増えています」だそうである。