第2回 ヴェルディの本懐
日本クラブユース選手権の連覇
先日、東京ヴェルディユースが、日本クラブユースサッカー選手権を制した。昨年も同大会で優勝しており、連覇となる。
チームを率いる楠瀬直木監督の指導は一貫していた。目先の勝ちを拾う戦い方をせず、プロで通用する選手の育成に主眼を置き、大局的な見地からチーム作りを進める。それでタイトルを獲得したのだから、なおさら今回の仕事は評価されるべきだ。
今年のチーム、スケールでは昨年に劣る。昨年のメンバーは、小林祐希、高木善朗(現FCユトレヒト)、高野光司、キローラン木鈴、キローラン菜入と5人がトップに昇格。天皇杯の東京都代表という快挙を成し遂げている。攻撃のアイデアが豊富で、非常にハイレベルなチームだった。
今年は時間をかけて個々が成長し、強くなってきたチームだ。肉体の限界ギリギリまで走りまくる杉本竜士を筆頭に、90分でやり切る力、ここぞという場面で持ち味を出す力は昨年より上だったように思う。ヴィッセル神戸U-18との決勝戦で生まれた唯一のゴール、南秀仁が対峙するディフェンダーとの勝負を逃げず、フェイントでひらりとかわし、左足で突き刺したミドルシュートにもそれは表われていた。
近年、東京Vの育成組織に関わってきた中村忠コーチはこう語る。
「今年の中心メンバーは中学時代に実績の残せなかった選手たちです。大きな大会ではベスト4もない。その彼らが自主的にミーティングを行い、横のつながりを強めながら、成長してきました。クスさん(楠瀬監督)の指導は選手の長所を最大限に生かし、なおかつ点と点を線で結ぶのがうまい。杉本や(中島)翔哉のような、昔のヨミウリを匂わせるサッカー小僧の存在がうれしいですね」
選手育成に心血を注いできたヴェルディの面目躍如。と声を大に言いたくなるが、それはまだ気が早い。いつか彼らがトップの中軸を担い、さらに日本サッカーを代表する選手に数えられるようになったとき、大いに喧伝したいものである。