TOP>>コラム>>FOOT ISSUE>> #11 緑のDNAを持つスフィーダのアタッカー
footissue

#11 緑のDNAを持つスフィーダのアタッカー

東京のフットボールに関する様々なイシューをコラムで綴る「FOOT ISSUE」
第11回は現在チャレンジリーグでプレーする“緑のDNA”を持つ女子サッカー選手のオハナシ。

緑のDNAを持つスフィーダのアタッカー

出場機会を求めてスフィーダ世田谷FCへ

背番号26がピッチを駆ける。相手守備陣との駆け引き。一瞬の隙を見逃さずスペースへ飛び出していき、決定機を作り出す。攻撃から守備に切り替わると、ファーストディフェンスの役目を請け負う。前線からのチェイシングで後方の味方を援護するなど、攻守両面で欠かせない存在となっている。

2012年からスフィーダ世田谷FCに加入したFW長澤優芽。彼女には名門のDNAが刻まれている。日テレ・メニーナで頭角を表し、フォワード、サイドバックでプレーしてきた。「皆、上手いですよね。なんで私がいたんだろう」と笑うが、育成年代の最強チームの一員として全国の頂点にも立った。高校3年になり、進路を決断する時期がやってきた。目の前には、いくつかの選択肢があった。トップチームの日テレ・ベレーザに昇格することもできたが、長澤はピッチに立ち続けられる環境を求めた。

「ベレーザに行くか、他のチームでやるかで悩みました。野田さん(日テレ・ベレーザ監督)からは『上がっても良いよ』と言ってもらったんですけど、ベレーザですぐ試合に出られるかは分かりません。だから試合に出ることを第一に考えて、大学か他のチームを考えました」

ベレーザという高いレベルで揉まれることで、得られるものもあっただろう。同年代の仲間は世代屈指の実力者が揃っており、切磋琢磨しながら自分の現在地を知ることができる。そして何より、なでしこジャパンの主力と練習を共にするだけでも、刺激を受けることができる。試合に出ずとも、成長できる環境だ。だが長澤は、ピッチに立ち常に試合に絡むことで自らを高める道を選んだ。残る選択肢は2つ。大学に進学し、サッカー部でプレーするのか。それとも他のクラブチームを探すのか。

「テラさん(寺谷真弓・日テレ・メニーナ監督)は大学推しで、私も良いかもなって思ったんです。でも、ずっとクラブチームでやってきたのもあったし、最終的にはスフィーダに決めました」

スフィーダ加入前、長澤はチームの練習場を訪ねた。「練習を見学して、まず監督が熱い人だなって(笑)。監督は、私がどんな選手か分かっていて『スフィーダに来られるなら歓迎する』と言ってもらいました」

宣戦布告!?

今年1月、スフィーダのファン感謝祭が行われた。そこで新加入選手のお披露目もされ、長澤もその場にいた。彼女はサポーターの前で「1部に昇格して緑を倒す」と宣言した。“緑”とは、もちろんベレーザのことである。 「確かに言いました。でも、それは敵視しているとかじゃ全然なくて(笑)。個人としてもチームとしても成長して、昇格した時にベレーザにも勝てるようになりたいという意味で言ったんです」

スフィーダの長澤優芽としてベレーザに勝ちたい。そんな気持ちが込められていた。ちなみに今年3月に練習試合が行われたが、その時は0-9と大敗を喫している。現時点で、両者の間に厳然たる差があるのは間違いない。だが、この時はリーグ開幕前の時期だったため、スコアを額面通りに受け止めることは出来ない。真剣勝負ならベレーザに力の差を更に見せつけられていたか、逆にもっと拮抗した展開になっていた可能性もある。

「あの時は正直『早っ、もうやるんだ』って思いました(笑)」 練習試合で対戦した時に、見慣れたユニフォームを纏った先輩や後輩を向こうに回し、長澤はこう思ったそうだ。次はベレーザとの真剣勝負の場で、彼女は何を思うのだろうか。その時は近い将来に訪れるであろうリーグ戦まで楽しみに待つとしよう。

◆前後のページ | 1 | 2