#27 4/1 J2 第6節 FC町田ゼルビア vs 東京ヴェルディ
『東京偉蹴的 MATCH OF THE WEEK』 #27
主力不在の中でチーム力を示したゼルビア 美しいフットボールを展開し、美しく散った
4/1(日)16時 町田市立陸上競技場
2012 Jリーグ ディビジョン2 第6節 FC町田ゼルビア 1-2 東京ヴェルディ
東京ヴェルディを聖地・野津田に迎える。FC町田ゼルビアにとってのビッグマッチは、16:04にキックオフした。試合開始から、ゼルビアが主導権を握る。最終ラインからしっかりとパスを繋ぎながら、ビルドアップしていく。しかし、仕掛けのスイッチとなる縦パスを入れることができない。試合後、敵将であるヴェルディ・川勝良一監督が、「前半は最終ライン以外寝ていた」と話した。その言葉通り、ヴェルディは前線の選手達の動きが重かったが、守備陣は集中していた。
チャンスを作れないゼルビアだったが、相手にも何もさせない。攻守の切り替えで上回ったからだ。DF津田和樹が、「プレスは機能していた」と話したように、ボールを失ってもその瞬間に複数の選手が囲い込んで奪い返す。日々の練習で取り組んできたことが、試合に反映されている。守備から攻撃への切り替えも秀逸だ。カウンターからFW勝又慶典、FW平本一樹の2トップがスペースを狙う。相手守備陣との、ギリギリの戦いを演じた。前半は、完全にゼルビアが試合を掌握した。
ヴェルディ・MF小林祐希が、「ポゼッションをされ、パスサッカーをやられたのは非常に悔しい」と話したように、前半は間違いなくゼルビアが主導権を握っていた。シュート数でも、4本対2本と押し込んでいた。
眠りから覚めたヴェルディ
主導権を握りながら、得点を奪えなかったゼルビア。無失点で乗り切ったヴェルディ。スコアレスで迎えた後半、一転してゼルビアが追う立場に変わる。1分、ルーズボールに反応したFW阿部拓馬が、ボールの落ち際をダイレクトボレーで叩く。これが鋭くゴール左に突き刺さり、ヴェルディに先制点が生まれた。ハーフタイムでしっかりと立て直す、Jの先輩の意地を見せつけられた。直後、ゼルビアはオズワルド・アルディレス監督が動く。MF鈴木崇文に代えてMF北井佑季を投入する。自分が投入された意味は、北井自身が一番よくわかっている。
「点を取らなければ勝利も勝点もない状況で、点を取るんだという監督の狙いはわかった。」
そして、ゼルビアのジョーカーが起用に応える。後半20分、DF太田康介がボールを奪うと、そのまま持ち上がって縦パスを送る。北井が、完璧なコントロールで前を向く。相手ディフェンダーも寄せる隙がないほどの、流れるような動きから右足を振り抜く。相手GKの手を弾き、ゴールが決まった。北井が太田を称える。
「相手が多く、スペースが狭くても、康介さんはそこを通せる。だからパスが来ると思っていた。」
しかし、後半はヴェルディのペースで進んでいた。「同点にしたら、そのまま押し切りたかった」と、北井が振り返ったように、ゼルビアとしては更に勢いに乗りたかった。しかし、後半開始から投入されたFW杉本健勇の存在が、ゼルビアを苦しめる。懐の深いキープと高さで起点を作られ、押し込まれるようになった。28分、CKから何度もシュートを打たれるも、懸命のブロックでゴールは割らせない。だが32分、ゴールをこじ開けられてしまう。CKを杉本健が完全にフリーの状態で飛ぶと、ドンピシャのヘッドを決められた。
ゼルビアは、FW鈴木孝司、MFドラガン・ディミッチと立て続けに前線の選手を投入する。しかし同点、更に逆転ゴールは奪えず、試合終了。初の東京クラシックは、黒星で終わった。
チーム力の高さは見せた
勝利はできなかったが、DF田代真一、DF薗田淳のセンターバックコンビを欠いた状態で奮闘した。この日の最終ラインはDF三鬼海が初スタメン、DF藤田泰成、津田、太田はいつもとは違うポジションでのプレーだった。それでも、柔軟に対応して試合を戦った。中盤を見ても、MF庄司悦大とMF下田光平のダブルボランチは初めてのコンビだ。顔ぶれやポジションが変わっても、チーム力は下がっていなかった。それは、チーム全員が同じサッカーを目指し、共有できているからだ。
また、試合には敗れてしまったが、前半はゼルビアらしさが出ていた。「美しいフットボール」を体現しており、ヴェルディと互角以上に渡り合ったことも含めて、今後に期待が持てる試合だった。
(了)