#18 12/23 全日本女子サッカー選手権 準々決勝 日テレ・ベレーザ vs 伊賀FCくノ一
『東京偉蹴的 MATCH OF THE WEEK』 #18
12/23(金)14時30分 全日本女子サッカー選手権 準々決勝
日テレ・ベレーザ 1-0 伊賀フットボールクラブくノ一(熊谷スポーツ公園陸上競技場)
強風の中で行われた試合は、風上の日テレ・ベレーザが開始から主導権を握った。前半3分、FW永里亜紗乃が相手ディフェンダーにマークされながら強烈なミドルシュートを放つ。14分には、相手のミスでボールを奪った永里が素早く繋ぐ。パスを受けたFW木龍七瀬がフリーで狙うも、相手GKに防がれる。ベレーザはボールを失った後の切り替えが早く、伊賀フットボールクラブくノ一の選手からすぐさま奪い返していた。しかし、押し込みながらもゴールが奪えない。17分、バイタルエリアを崩してMF原菜摘子がシュート。相手GKが弾いたこぼれ球を永里が押し込むも、ゴールネットを揺らすことができない。それでも26分、待望の先制点を挙げる。永里のパスで左サイドを抜け出したDF小林海青がクロスを上げる。これをFW岩渕真奈が、スライディングシュートでゴールに突き刺した。この日はあまりの強風で、セットプレー時にボールが動いてしまい、選手達はやりにくそうだった。それでも、ベレーザは風上ということもあって、スピーディーな攻撃を見せていた。前半は、ベレーザペースで折り返した。
後半もベレーザが最初のシュートを放った。このまま主導権を握り続けるかと思われたが、風上になった伊賀FCに押し込まれることになる。完全に崩される場面はなかったものの、前線にボールを送っても風に押し返されてしまった。素早い攻守の切り替えですぐにボールを奪い返すことはできていたが、ベレーザはなかなか相手ゴール前まで行けなくなった。対して伊賀FCは、20分過ぎからCKを得る機会が多くなる。風に流され、ボールが直接ゴールに飛ぶこともあった。ベレーザ守備陣が対応を誤れば、失点していてもおかしくなかった。しかし、この時間帯を耐え抜くと、30分以降はベレーザにもチャンスが生まれるようになった。40分、原のパスを受けた木龍が、巧みなステップで相手をかわしてシュートを放った。結局、試合は前半に奪った1点が決勝ゴールとなり、ベレーザが準決勝進出を果たした。
今大会、ベレーザはスタートから4-1-4-1とも4-1-2-3とも取れるシステムで臨んでいる。これによって岩渕や木龍によるサイド攻撃がより活性化した印象だ。ここに永里や原、MF伊藤香菜子が絡むことで、より破壊力のある攻撃が展開できている。そして、忘れてはいけないのがMF中里優の貢献だ。彼女が中盤とディフェンスラインの間で仕事をすることで、原や伊藤が更に前線へ侵入できる。準決勝、決勝と勝ち進めば相手のレベルも上がる。このシステムのままで行こうとしているかはわからないが、単なるオプション以上の有効性を示している。
<日テレ・ベレーザ 伊藤香菜子コメント>
-強風の影響は?
「ゴロのパスもずれてしまうくらい強い風でした」
-システムが変わってより前線でプレーできているが?
「今までと違ってアンカーに中里選手がいて、最初にいる位置が一列前なので、高い位置で攻撃に絡める。自分の特徴が出せるかなと思っています」
-準決勝は相手のレベルも一段上がるが?
「新潟とはリーグ戦で当たって、2試合とも勝っていますけど、内容に関しては満足できるものではなかった。どちらかというと2試合とも新潟ペースで試合を運ばれてしまった。今度は内容でも圧倒して勝ちたいですけど、トーナメントは勝つことが絶対条件なので、勝利を目指して頑張りたいと思います」
-伊藤選手個人としてはどのようなプレーを見せたいか?
「勝つために、状況に応じたプレーというか、点を取らないと勝てないので、点に絡むようなプレーをしたいと思います」
<日テレ・ベレーザ 野田朱美監督コメント>
-風がかなり強かったが影響は?
「私が現役の時を含めても、こんな強風あったかなというくらい強くて、後でニュースを見たら風速18mくらいあったみたい。影響というか、サッカーにならないだろうなと試合前から思っていて、その通りでした」
-リーグ戦とは違うシステムだったが?
「怪我人が多いのと、トーナメントということで、少し守備面を強化しようと。点を取られたら難しくなるので、守備面を強化するという意味でいじってみました」
-中里選手がアンカーの位置で良いプレーを見せているが?
「期待に随分応えてくれています。本来はメニーナの時から攻撃的な中盤でプレーしていたんですけど、うちには攻撃的な選手がたくさんいるのと、スタミナがあって真面目な選手なので思い切って抜擢しました。自由にというよりは役割をはっきりさせて、本人は窮屈かもしれないけど、チームの戦術のためにやってもらっている。ここまでは本当に想像以上にやってくれているなと」
-準決勝は今のシステムで臨むのか、それとも他のやり方も試してみるのか?
「システムを変えているというよりは、今のベストの選手を選んだ時にフィットするという意味で、色々なシステムができるように今年はみんな各ポジションを試したり、若干システムもいじってきた。何人ベストのコンディションでいられるか。トーナメントになるとそこも勝負になってくるので、システムをいじるとかこのままとかではなく、何人が生き残っているかなという所で、またベストな選手を使いたいなと思います」
(了)
(著者プロフィール)
青木 務(あおき・つとむ)
1988年、神奈川県出身。湘南ベルマーレ主催のスポーツマスコミ塾を経て、大学卒業後はフリーライターとしての活動を始める。