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第19回 物語はどこまでも

チームの見方が重層的になる

2013年シーズンの幕開け、ホームの味の素スタジアムでアビスパ福岡と対戦した東京Vは0‐1で敗れた。

今季、私が特に注目しているのは2年目の南秀仁と杉本竜士だ。南はサブに入ったが、出番はなし。杉本は軽度の故障でメンバーから外れた。こちらが鼻息を荒くして待ち構えていると、肩すかしを食らうことが多い。期待に応えて華々しい活躍を見せてくれれば話は早いが、そううまくはいかない。選手に辛抱が必要なように、観戦者にも根気がいる。ユース時代から数えて、かれこれ4、5年は待ってきたのだから、いまさら少しくらい待たされてもどうってことはない。

南はゴールに直結するプレーを持ち味とするアタッカーで、ボックス内の冷徹な仕事ぶりは十年選手かと見まがうほどだ。一方、杉本は群を抜くスピードを持つドリブラー。ひとりだけバッシュを履き、体育館の床でビュンビュン動いているようなクイックネスがある。昨年のルーキーイヤーはふたりとも若気が全開だった。気ばかりはやって監督と衝突したり、やることなすこと裏目に出る。こうも見事に空回りするものかと興味深く見ていた。今年は違うぞ、というところを必ずや見せてくれると思っている。

彼らのような若い選手について、私が知っていることは多くない。知らないことだらけと言っていい。それでも日々のピッチには彼らの24時間が凝縮されているはずで、一挙手一投足を観察しているだけで何かを受け取った気になる。

トップの試合、目の前のピッチには11人しかいない。試合中は余計なことを考えず、ボールの行方を追っている。だが、意識下にはそこに立てなかった選手やいつか立つかもしれない選手が存在し、上下のわずかな裂け目から顔をのぞかせる。要は、チームの見方が表面的ではなく、重層的になる。これこそ、ひとつのクラブを見続ける醍醐味であり、私の心をとらえて放さない理由である。

そういった興味は掘り下げるだけでは収まらず、横にもどんどん広がっていく。

3月10日、JFLが開幕する。私はFC町田ゼルビアの試合に行く予定だ。南や杉本の同期で、東京Vからレンタル移籍中の田中貴大がいる。また、ひとつ上の代の高野光司(レンタル移籍)や、東京Vユースから法政大を経て加入した真野亮二と平智広もいる。

終わらない物語だ。楽しみは尽きない。

(了)

(著者プロフィール)
海江田哲朗(かいえだ・てつろう)
1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディに軸足を置き、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『サッカー批評』『週刊サッカーダイジェスト』『週刊サッカーマガジン』『スポーツナビ』など。著書に東京ヴェルディの育成組織を題材にしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)。

海江田哲朗 東京サッカーほっつき歩記は<毎月第1水曜日>に更新します

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