#10 東京23FC 中盤の支配者
諦めかけたプロへの道 このクラブで道を切り開く
現在、猪股は不動産会社で働きながら東京23FCでプレーをしている。サッカーは静岡学園高校、亜細亜大学とキャリアを重ねてきた。大学時代はプロを目指していた。Jクラブの練習に参加しアピールするも叶わなかった。サッカー人生の分岐点に立った猪股は、海外のクラブにチャレンジするか、サッカーをやめて働くかで迷う。
海外への道を模索し始めた猪股は、川崎フロンターレJrユース時代にお世話になったコーチのツテを頼りに、アジアのクラブに売り込みをかけた。だが、そのコーチからはアジアの現実も聞かされた。 「海外はあまりお勧めしないと言われました。チャンスは広がるが信用は薄く、リスクも高いという事でした」
そんな時に出会ったのが当時は東京都社会人リーグ1部所属の東京23FCだった。クラブには、他のセレクションで仲良くなった山本恭平がおり、彼に誘われた形だ。 「その時は行くアテもなかったので、体を動かそうかなという気持ちで参加しました」
軽い気持ちでの参加だったが、この東京23FCとの出会いは、猪股にとって大きなものだった。
「話を聞いて、クラブの理念や方向性に感銘を受けました。サッカーだけじゃ生きていけないですし、選手として上を目指しながら仕事もしっかり両立できる環境は良いなと思いました」
仕事とサッカーの両立は、社会人サッカー選手の宿命だ。東京23FCも、仕事が終わってから練習が始まるため、必然的に帰宅するのは深夜になる。だが、そうした環境に文句を言わず、むしろ感謝できるのも社会人サッカー選手の特徴だ。 「好きでやっているわけだし、毎日キツイですけどやりがいがあります。仕事をしながらサッカーができる環境に感謝していますし、全然苦じゃないです」
天皇杯初出場は逃したが全社優勝そして地域決勝大会進出を掴めるか
8/25に行われた東京都サッカートーナメント決勝。東京23FCはPK戦の末、JFL・横河武蔵野FCに敗れた。
猪俣には勝つ自信があった。準決勝の勝利の後に 「横河は格上だと思いますけど、僕らも積み重ねてきたものを出せるように頑張りたい。いつも通りの力が出せれば、恐れる事は無い」 と話していた。
実際、勝利のチャンスはあったが、惜しくも届かなかった。それでも下を向いている暇はない。猪股、そしてクラブも、更に上を目指していかなければならない。天皇杯初出場は逃したが、今後も重要な戦いが続く。
「残りのリーグ戦も全て勝って、関東リーグ1部昇格を決めたい。これから全社もあるし、JFLに昇格できる大会もある。そういったチャンスを活かしていきたい」
東京23FC・中盤の支配者は言葉に力を込めた。その表情からは、このチームで上がっていくんだ、という固い決意が見えた。
(了)
(取材・文 青木務)