#9 東京都リーグ屈指のフォワード
青梅のバンディエラ
そんな彼に対してサポーターは、“バンディエラ”という言葉を岩田のチャントに入れている。日本語で「旗頭」、チームの象徴とも置き換えることができるこの言葉を、サポーター達はリズミカルに歌っている。ただ初めて聞いた時、岩田はバンディエラという言葉の意味を知らなかったという。
「ツイッターとかでバンディエラって書いてあって、最初は何かなと思ったんです。でも調べたらわかって、すごく光栄だなと思いますし、嬉しかったです」
穏やかな表情や物腰の柔らかさには、人から好かれる要素が詰まっているように思う。ピッチでは頼りにされ、ピッチ外では愛される存在なのだろうと、勝手に想像してみる。
だが、ピッチ内の彼は血気盛んなハンターのような男だ。相手陣内、ボールがタッチラインを割りそうになる。プレーが切れれば青梅のボールだ。すると、岩田が相手とボールの間に猛然と駆け込み、体を入れる。ボールがタッチラインを割った次の瞬間、「マイボール!マイボール!」とレフェリーにアピールする岩田がいた。そばで見ていて驚いてしまった。
その時までに、何度か試合後に話を聞いていた。抽象的だが、彼はふわっとした雰囲気に包まれていた。だから、ギャップに驚いてしまった。だが、少し考えればわかることだ。彼は、結果でこそ評価されるストライカーという生き物だ。ピッチ内でふわっとしているはずがなかった。
そんな彼のオン ザ ピッチでのオーラも、相手に脅威を与えているのかもしれない。青梅FCは現在、東京都1部リーグで首位をひた走る。目標は当然、関東リーグへの昇格だ。
「攻撃はうちの武器だと思います。でも、守備はまだまだ良くしていかないと。前線から守備をしっかりやれば、後ろを助けられるし、僕らフォワードが点を取れば、大事な試合でも勝てると思います」
また、今年の国体東京都選抜に選出された。これまで、国体とはあまり縁がなかった。
「メンバーにギリギリ入れないことが結構あって、去年もサポートメンバーで漏れてしまった。一昨年も最初はサポートメンバーだったんですけど、本大会の前に出られない人が出てきて、繰り上げで入れました。いつもギリギリのラインですね」
今回は、晴れて最初からメンバー入りを勝ち取った。 「必ず出場機会はあると思いますし、まだ国体で結果を出したことがないので、選んでくれた監督のためにも点を取りたい」
青梅のエースにして東京都屈指のストライカーは、まだまだ貪欲に結果を求めている。そんな彼には、『アーレオー いわーた バンディエラ オーオ♪ アーレオー いわーた バンディエラ オー♪』のチャントが送られる。
(了)
(取材・文 青木務)